高瀬アキ

2005年8月19日
 現在はドイツに住む、アートであることとはみ出すことを無理なく重ねられ
る(多少コンテンポラリーなことをやろうとすると、気の抜けたジョン・ゾー
ンのようになってしまう場合もあるのは痛し痒しだが……)ヴェテランの女性
ジャズ・ピアニストの特別公演。客にドイツ人とおぼしき人はいなかったが、
ドイツ大使館、ベルリン市政府、東京ドイツセンターといった名称が後援者欄
に記されている。杉並区教育委員会も同様で、場所は杉並区梅里にあるセシオ
ン杉並。環状7号線脇にある区が持つ施設で初めて行くが、それなりに立派な
ホール。大きさは駒場エミナースぐらいか。それらが有意義に活用されている
かどうかはともかく、本当にいろんな所にいろんなホールがあるんだろうなと
思わされることしきり。この公演、数日前の朝日新聞夕刊に目立つ感じで紹介
されていたが、そこそこな入り。

 ジャズと他の要素を組み合わせジャズ・ビヨンド表現を送りだしましょうと
いう趣旨を持つだろうもので、二部構成による。一部は“キネマ&ムジーク”
と題して、20年代のベルリンの1日を追ったサイレント映像と合わせての即興
演奏。高瀬アキと、旦那にしてドイツ・フリー・ジャズ界の重鎮(cf.グロー
ブ・ユニティ・オーケストラ他)であるアレクサンダー・フォン・シュリッペ
ンパッハがグランド・ピアノを互い違いにして向き合い、そこに25歳というD
Jが絡む。二部の最後のMCで分かったのだが彼はシュリッペンパッハの息子
だそうで(義理ママになるんだろうな)、普段はヒップホップをやっているら
しい。

 二部は“ジャズ&ポエトリー”と題される。詩人の白石かずこの作品に高瀬
が曲を付けたものをやったようで、伊藤君子ら女性シンガー二人、そして高瀬
と伊野信義(2001年5月3日)が組み合わさる。ジャズ的な飛躍力をベー
スとするニュー・ミュージック、と乱暴に説明しておこうか。ステージ後ろの
画面には詩が出たり、イメージ映像が出たり。ある曲で、ピアノのお腹にピン
ポン玉をいっぱい入れて演奏。弦の揺れでときどきピンポン玉が跳ね上がるの
が生理的に楽しかった。最後には、旦那と息子もヴォイスで加わった。

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