年齢よりも若く見えます。と言ったら、「緑茶を飲んでいるからね」と答え
るお洒落なギタリストはステージ上でも、緑茶のペットボトルを飲んでいた。
その発言、昨年にインタヴューしたときのこと。で、「年齢をきいてもいいで
うすか?」と問うたら、「いいけど、その質問には答えないよ」。あのときは
カサンドラ・ウィルソンのバッキングは見たものの(2004年9月7日)、
その後に行われた彼の自己グループでの実演はアメリカ行きがあったため見て
いない。嬉しい。やっと、彼のグループのパフォーマンスが見れた。新宿・ピ
ットイン。

 昨年と同様、ツトム・タケイシ(ベース)とJ.T.ルイス(ドラム)を従
えてのもの。この3人はたぶん、ビル・ラズウェル制作のヘンリー・スレッギ
ル96年盤で顔を合わせたのが最初だと思う。彼らは譜面の束を手にしてステー
ジにあがる。確かに、初ソロ作『コスチューム』はすべて譜面になっていると
言っていたけど。3人がしっかりと対峙し合って、音を紡ぎだしていくといっ
た感じの演奏。ルイスはハービー・ハンコック(2003年8月23日、2001年12月
27日、2000年3月14日)のロックイット・バンドで一躍知られた人でR&B系
レコーディング・セッションもいろいろとやっているが、けっこうゴツゴツと
ジャズ流儀で叩く人なのだなあ。

エレクトリック濃度が高い曲だと、まんまハリエット・タブマン(ロスとル
イスとメルヴィン・ギブスによるトリオ)だなと思わせる。また、そのときだ
と、ちょっとおとなしいビル・フリゼールという印象を聞くものに与えたりも
(純粋な弾き手としては、もっちっと爆発してもいいかも。あれ、大人なのか
、それとも……)。ふーむ。フリゼールがそれなりに認知され、受けているの
だから、ロスだってもうちょっと注目を集めてもいいのではないのか。彼もま
たストーリーを作れるギタリストであるし、フリゼールと違い素敵な声で歌う
こともできるし、そして何より、本当にお洒落で雰囲気を持っている。

 そういやあ、ロスが可哀相と言えば、カサンドラ・ウィルソンが彼に取る扱
いも少しそう。前作『グラマード』でまたレコーディングに呼ばれたと思った
らウィルソンとの共同プロデューサーにはファブリジオ・ソッティ(英語読み
)という無名のフランス人ギタリストが抜擢されていたし(結局、彼はどうし
たのだろう。あのアルバム以降、ぜんぜん名前を見ない)。また、ウィンソン
の新作はなんとT・ボーン・バーネットがプロデュースを請け負っているのだ
が、ロスから受けた情報によると、近くある彼女のツアーには呼ばれているも
のの、新作レコーディングに呼ばれていないという。なんだかなあ。実は、ミ
ックス前のものながら1曲だけ(クレジットはいっさい、不明)その新曲を聞
いた。生楽器は多用していながらけっこうプログラム的質感を持つサイバー・
サウンドが採用されたもので(バーネットも異常に張り切って事にあたってい
るのは一聴瞭然)、それは“ディープ・サウスのビョーク”なんて感想も少し
引き出すものになっている。ともあれ、次作でまた一つ別の所に彼女が行くの
は間違いないし、超期待できるものであるのは疑いがない。

 会場には、タケイシ(2004年5月28、29日)を米国版ビッグ・バンドで起用
する田村夏樹/藤井郷子夫妻も。ああ、お二人とこの前に会ったときもW杯予
選の北朝鮮戦の日だった(あの晩のライヴ原稿は2月10日の項に載っているけ
ど、本当は9日。間違って入れてしまって、直すのが面倒でそのままにしてあ
る)。

 日本にはギターを3本持ってきたといった言ってたが、ステージでは4本を
使用。エレクトリック。バンジョー、アコースティック、枠だけで中が空洞な
ギター。3分の1ぐらいは歌が入る曲だったか。そして、歌はアルバムで感じ
るよりか訴求力があっていい感じ。純粋なヴォーカル・アルバムも所望したい
ところであるか。そういえば、ロスはチョコレート・ジニアスとも仲がよく、
一緒にレコーディングしたいナという気持ちも持っている。なお、彼の最初の
ギター・アイドルはスティーヴン・スティルス(CSNY、マナサス他)です。

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