まず6時から、六本木・ブエナビスタインターナショナルジャパン試写室で
、ウェス・アンダーソン監督(「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」他)の「ラ
イフ・アクアティック」を見る。ビル・マーレイ扮する海洋冒険家/映画制作
家とそのクルー(チーム・ズィスーといい、お揃いの格好をしている。みんな
、それなりに癖アリ)たちと織りなす、海を舞台とする冒険譚。大半の舞台と
なる船のなかの描き方をはじめ、現実を十分に弁えた設定とまったくお伽話っ
ぽい(ポップと言うことも出来るはず)設定が絶妙な距離感とともに重ねられ
、不思議な味わいを出していておおいに頷く。

 含みと示唆とウィットに富む、他愛ないけど、なんとなくいい感じの娯楽映
画。黄色い潜水艦のシーンも出てきて、ザ・ビートルズのイエロー・サブマリ
ンへのオマージュとなっている感じの部分もあるか。なるほど、これはクスっ
と笑えて、ちょっと高揚させ、少しホロリともさせ、しいては人生は……人間
は……っても思わせる、大人の寓話というに相応しい映画だ。やるなあ、ディ
ズニー。

 そして、(ブラジル)音楽ファンは、ファロファ・カリオカ出身で、映画
「シティ・オブ・ゴッド」出演で多大な印象を残したセウ・ジョルジがクルー
の一員として出演していることに興味を惹かれるだろうか。彼がギターの弾き
語りをしているシーンは多数、それが風通しの良いアクセントとなったり、嬉
しい人間味を加味することに繋がっている。ジョルジの新作『クルー』は哀愁
や渋みに満ちた実直ギター弾き語り基調作となっていたが、それがもっと軽く
淡々とした感じで映画では披露されている。で、あらららと思わせられたのは
、「スター・マン」ほかパフォームする曲がどれもデイヴィッド・ボウイの曲
で、それをポルトガル語経由のいい加減なハナモゲラ調で披露していること。
ウヒヒヒ。
 
 とかなんとか、ポップ文化をいろいろと体内にため込んでいる人には、随所
に抗しがたい設定がなされている映画とも言える。そういえば、この前取材し
たマーカス・ミラーも同意していたが(それは、彼がケン・ヒックスというオ
ペラ歌手のプロデュースをしたことからそういう話になった。発売前のプロダ
クツを5曲ぐらい聞かせてもらったが、オペラとジャズの融合というお題目に
は鼻をつまみたくなるぼくもあっと驚く良好な出来を示していた)、現在ア
メリカ音楽界ではベイビー・ブーマー世代をはじめとするエルダー・マーケッ
ト(ロック最初期世代ですね)の再開拓に腐心しているそうだが、それは映画
界のほうにも当てはまるのだろうか。ともあれ、映画「ライフ・アクアティッ
ク」はちょっと先が見えた人たちのココロにもポッとなんらかの火を燈すよう
な作品だと思う。

 そして、終わったあとタクシーに飛び乗り、南青山・マンダラに。ブラジル
が誇る名パンデイロ奏者マルコス・スザーノを挟んでのセッション(2001年12
月19日、2002年7月21日、他)がちょうど始まるときに到着し、ニコっ。スザ
ーノ以外は、勝井祐二(2004年11月19日、他)、エマーソン北村(2003年3月
11日)、そして佐藤タイジ、森俊之、沼澤尚のサンパウロ(2002年1月30日、
2004年1月30日、他)組。それに、途中から、ブラジル人のキーボード奏者も
加わる。ずっと途切れなしの2時間セッション。佐藤タイジはギターよりもベ
ースを弾いているときのほ方が長かったかかも。スザーノのブラジル流儀を聞
かせますというよりは、日本人のお手合わせのほうにスザーノがおおそうくる
かいといった感じで重なる。彼はそのほうが新鮮だろうな。一番、自分の流儀
を出したのは勝井祐二か。勝井、沼澤を中心とするセッションが4月にモーシ
ョン・ブルー・ヨコハマであるそうな。それから、スザーノは今週末のシアタ
ーブルック(2000年7月29日、2001年12月22日、2003年6月22日)の公演にも
ゲスト入りするという。

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