シャクティ

2005年1月31日
 初台・東京オペラシティコンサートホール。とても久しぶりに行ったけど、
すごい木の質感を強調する内装が取られた、クラシック用ホールなんだな。英
国人ギタリストのジョン・マクラフリン(女房はラベック姉妹のどっちかなん
だっけか)が、大昔からたまにやっているインド古典音楽味応用ユニット。始
まる前、凄いコンサートにワタシは来ているのだ、というお客の自負のような
ものがもわーんと漂っているのに非常に気後れを覚える。まあ、ぼくはマクラ
フリンに少し偏見を持っているせいかもしれぬが(でも、最近日本盤リイッシ
ューされた35年前に出た彼のファート・アルバムを聞いたら、最上級のロック
経由ジャジー表現で驚きましたが)。なんにせよ、去年の夏に見たザキール・
フセインもいたタブラ・ビート・サイエンス(2004年9月5日)のインド特殊
技巧にあまりにこっくりさんしてしまったので、かなり楽しみな気分で会場に
来たのだ。

 ステージに出てきたマクラフリンとザキール・フセインほか3人のインド人
奏者(打楽器2、ギター1)はステージに作られた雛壇のようなものに裸足で
(たぶん)ちょこんと座る。で、ショールのようなものを胡座をかいた下半身
に巻く。インドって暑いイメージがあるけど、それがインド音楽の流儀なのか
。で、マクラフリンが導くフュージョン味とインド味の重ね合わせ表現がやん
わりと展開される。また、ときにはやはりインド古典の流れを汲むシンガーが
入って歌ったりもする。もう一人のギターはスラーを多用して、やはりどこか
インドっぽいと思う。一部はマクラフリンがラップ・トップでシタールのよう
な音やストリング系キーボード音やビート音を流していたようだ。

 もうずうっと長年LAに住んでいるはずのザキール・フセイン(若々しい、
老けないなあ)はさすがではあるが、タブラ・ビート・サイエンスのときの方
がはったりが効いててアトラクティヴであるとぼくは思った。もう一人の打楽
器奏者の、後半部で彼をフィーチャーするソロは完全にブラジルのパンデイロ
と同じの奏法によるもの。へえ。そういえば、そのスペシャリストであるマル
コス・スザーノのセッションが2月15日に南青山のマンダラであります。

 2時間はあったろう公演終了後、お客さんはみんな総立ち。こんなにすぐに
会場の全員がスタンディング・オヴェイションになる公演を初めて経験する。
本当にみんな感動たっぷりという感じで、満足そう。それ、ぼくの理解を超え
るものではありました。で、アンコールでは酔っぱらったとき変人だったら一
度ぐらいはしたことがあるだろう(でしょ?)、タブラ口真似合戦を二人の打
楽器奏者間でしたりもした。

 この会場、1時間分だけとはいえ、駐車券をくれるのは親切。距離的にはそ
んなに遠くはないのだが、家から初台は電車で行くとなると2本乗り換えない
と行けない不便な場所。ゆえに車で行ったので、それはありがたかった。

 ところで、中尊寺ゆつこが亡くなった。大学生のとき、彼女とは一緒の音楽
サークルにいたことがあった。だから、呼び捨てゴメン。幸子というのが本名
だったけど、その頃からユツコと呼んでくれと言ってましたね。当時、ケイト
・ブッシュのファン・クラブの会長をしていた彼女は、なんちゃってなパンク
・バンドでベースを弾いたりしていた。その後、ちゃんとした親交があったわ
けではないけど(でも、彼女がBMR誌で連載していた4コマ漫画で、昨年秋
、一回休載したあとの号に佐藤英ノ助という大惚けじじいとして登場させてい
ただいた〜それは50年後のことを題材にしたもので、おばあの中尊山湯子も登
場してた……)、やっぱり近くにいたことがある、近い歳の人の死にはうーむ
。いろいろ、感じますね。諸行無常。でも、おもいっきり生き、才(それは、
少女のとき彼女を熱心に洋楽に向かわせた好奇心/アンテナありき、なもので
あったと思う)を発揮できた、いい人生だったと思います。どうぞ、どうぞ安
らかに。小林くん、大変でしょうが、こんな仕事部屋で良かったらまた遊びに
来てください。

 ……それとは関係なく、お酒控えちゃおっかなーとか、この10日間ぐらいお
ぼろげに思っているワタシ。この2週間、洒落になんない量の仕事をこなして
いるのだが(あんまし遊んでないし、そんなに飲んでないよお)、そうなった
のも半分は自業自得。だって、結果的にこの1月の前半は本当に遊び惚けまく
ってたから。これほどまでに、朝まで飲んだくれるという生活パターンが毎日
続いた事はなかったのではないか。起きると昼下がりで、しばらくすると(お
酒、完全に抜けないまんま)飲み関連行事に喜々として出掛けるという日々。
ほんと、仕事なんかやる暇あんましなかったもん。お酒を愛好するという所作
はお金もかかるが、時間もとっても取られちゃう。でも、さすがにこれだけ酒
浸りになると清々しいというか、呆れるのを通りこして笑っちゃうというか。
で、ちょい飽きたかなァというか、自分が登るべき山は他にもあるんじゃない
か、な〜んてふと思ってしまったんだよなー。二日酔いで翌日反省したことは
あっても、そんなふうに感じたのは初めて。さあ、どうなることでしょう。“
ライヴ三昧”ってなんかお酒のことばかり書いてますね、って言う人もたまに
いるけど(内心、そういう感想を漏らす人について、ぼくとは別の場所に住む
可哀相な人物と判断させていただいております)、もうそんな感想は引き出さ
ないものになってたりして……。

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