雨。風邪っぽいのをずっと引きずってまーす。

 渋谷・クラブクアトロ。まず、忌野清志郎が生ギター片手に出てきてフォー
クのりのソロ・パフォーマンス。毎度のきんきらきんの格好、(JB流の)マ
ント・ショー付き。彼の歌を聞きながら、ブライアン・フェリーのそれとある
意味、双璧かとも感じた。R&B向けではない声質/声帯を巧みな歌唱法のも
と、妙味ありで自分化しているということで。やっぱ、得難い人ではあります
よね。

 そして、そんなに時間をおかずに、タラフ(2000年5月21日、2001年9月2
日)が登場。ステージには最大で12人、とにもかくにも、やりたい放題。ツィ
ンバロム、ヴァイリンやアコーディオンやクラリネットや歌らが特殊抑揚のも
と重なり、溢れ出る。美味しい人間の音楽……。我々とは異なる歴史、文化、
流儀があることを知らしめる音楽……。

 そして、最後に両者は共演。まず、忌野の「僕の先生」をやる。ちょっと寄
り道してるそれ、嬉しい仕上がり。ぼくは一緒に録音してほしいと思った。そ
れから、もう1曲、タラフ流儀の曲(ルーマニアのヒット曲らしい)をぶっち
ゃけ披露。その、アンコールの間じゅう、気分屋のタラフの行き方にあわせる
のが難儀だったのか、清志郎はニコリともせず、顔ひきつりまくり。あんな彼
を初めてた見たと、終わったあとの飲みでひとしきり話題になった。

 クアトロに会場に来る前に、渋谷の東芝エンターテインメント試写室で『フ
ェスティヴァル・エクスプレス』という映画を見る。

 カンウンター・カルチャーとしてのロックがまだ薔薇色の可能性があると信
じられていた1970年に、カナダで企画された連続フェスの記録映画。グレイト
フル・デッド、ザ・バンド、ジャニス・ジップリン、バディ・ガイらピカ一の
ミュージシャンがいたれりつくせり(シャワー以外は)の特別仕立て貸切り列
車に乗ってカナダを5日間で横断し、3か所(トロント、ウィニペグ、カルガ
リー)で野外コンサートを行うというもの。名付けて、フェスティヴァル・エ
クスプレス。いろんなトラブルで映画化されず、そのうち行方知れずになって
いた映像ソースが95年にカナダ国立図書館で発見され、03年にカタチにされた
もの(イギリス/オランダ映画とクレジットされている)だ。

 どの映像も興味深い。成功したとは言えないコンサートの模様(ザ・バンド
・ファンのぼくはとくに、彼らのものにゃ釘付け)もそうだが、呉越同舟の汽
車のなかで散々行われたのだろうジャム・セッションの映像がひどく刺激的。
酒とクスリがふんだんにあるなかでの気儘なお手合わせ。とくに、バディ・ガ
イ主体の奴と、ガルシアとジョプリンらが一緒にやっている模様はあまりに興
味深い。出演者たちもその列車の旅をとっても楽しんでいるというのもよく分
かる。しかし、若いジェリー・ガルシアのルックスは本当にうだつのあがらな
い使えなさそうなそれ。ほえええ、って感じ。

 当時の映像に加え、出演ミュージシャンやプロモーターたちの証言映像が新
たに加えられてもいる。列車セッションの場にも姿を見ることができ、証言者
としても、リトル・フィート(2000年12月8日)のケニー・グラッドニーが登
場。なんであの旅に加わっていたのかと思ったら、フィートの同僚サム・クレ
イトンとともに、そのフェスのときのデラニー&ボニー&フレンズのツアー・
メンバーをしていたんですね。

 ともあれ、いろいろと流れる音楽を聞いていると、基本的にはロックは何も
変わっていない。というか、進歩の著しく少ない芸能フォームであることが分
かる。リズム・フィギュアとか音色とかは別として。……ま、それでもいいじ
ゃん。ロックとは、若者の迸りの音楽、イキがった音楽、向こう見ずな音楽、
バカヤロの音楽、なのだから。

 杜撰なところもあるが、やはり見て嬉しいってなれる映画。『永遠のモータ
ウン』とか、マーティン・スコセッシ監修のブルーズ・シリーズとか、今年は
なにかと美味しい音楽映像が公開されたり、DVD化された年として記憶され
るべきかも。

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