昼間、マイケル・ケイン(2003年11月18日、23日)と会う。この週の頭はN
Yにいないと言っていたが、彼はボストンのニュー・イングランド音楽院で教
えているのか。ようやく、日本での彼のCDリリース(アコースティック・ア
ルバムとエレクトリック・アルバムの2枚だてになるはず)が固まりつつある
。秀逸な現代ジャズのカタチ。その際はみなさん、よろしくされたい。

 そのマイケルもちらりとこぼしていたが、ブッシュ優勢でやりきれない人は
NYでは少なくないようだ。道端で、反ブッシュTシャツ(ブッシュの顔に、
進入禁止の赤丸斜め線のマークを重ねた絵柄)を10ドルで売っている青年もい
た。話はズレるが、ヴィレッジの街頭の新聞の入ったボックス(無人の小さな
透明のやつ)にUTADAのリリース告知のカードが挟んであった。そこでし
か見なかったけど。

 夕方から雨。泊まっているホテルから近い、ヴィレッジの55バーというとこ
ろでの無料ギグにまず行く。アート・リラードという初老のドラマーの、ワン
・ホーンのグループ。他の構成員は20代か。これが、目新しいところは何もな
いが、実にまっとうな寛ぎ系のハード・バップ。ニコニコ、見れましたね。じ
いさんが一人で淡々とやっている店、ピアノを置くスペースはないので、ライ
ヴをやるとするならピアノレス編成となるのか。トイレに行くと、横の壁には
、ハイラム・ブロックとマイク・スターンとレニ・スターンがリーダーのここ
で録音されたライヴ盤が飾ってあった。発売元は日本のキング・レコード。

 その後、ハーレム。アポロ・シアター。実は昨日の昼間に突然アポなしで、
125 丁目イーストにあるオーネット・コールマン所有のハーモロディック・ス
タジオ(管理人はデナード・コールマン)に行こうかと思ったのだが、人と会
ったり買い物とかで時間がなくなり断念。なんだかんだで20回ぐらいはNYに
来ていると思うが、実はアポロ・シアターに行くのは初めて。横を通ったこと
はあっても。ちょうどアマチュア・ナイトをやっていたので、行ってみた。

 外側はそんなに偉そうではないが、中に入るとけっこう立派な、そこそこい
い感じの建物ね。チケットの値段は3段階。どれがいいと思うと窓口で問うと
、じゃ真ん中にすればとチケット販売のおねいちゃんは言う。で、2階席。開
演時間から1時間はたっていたはずで、もちろん始まっている。30代の黒人男
性が司会役をつとめ、出演者はステージ横にあるおまじないのオブジェ(木の
切り株みたいなやつ)を触り、それから熱唱する。もう仲間がたくさん会場に
来ていてやんやの喝采を浴びる人から、なりきりつつも寂しくバラード(リオ
ン・ラッセルの「ソング・フォー・ユー」)を歌う白人まで様々。リーディン
グをする黒人女性もいた。なるほど、こんな感じかなのかなあとイメージして
いたものとそんな違わない感じで、コンペチションは進む。4人のバッキング
陣は喉自慢のバック・バンドのように器用に伴奏を付けていく。なんとミュー
ジカル・ディレクターはレイ・チュウ(キーボード。80年代初頭のNYソウル
・サウンドの立役者の一人)じゃないか。って、それ有名な話なのかもしれな
いが。

 途中、休憩を挟んで、出演者は10人強でたかな(結局、僕が入ったとき歌っ
ていたのが、一番最初の人だったようだ)。ブーイングの嵐による強制退去者
は痩身の黒人青年一人(実は、ぼくはそんなに悪くないと思ったんだが。もっ
とヤバイのいたはず。あんまり、聴衆の拍手はあてにならんとも思った)。突
如サイレンがなり、ポリスの格好をした人が彼をステージからおいたてる。あ
れ、当事者だときついな。全員が歌い終わると、みんなステージに出てきて、
次々に客に拍手を求め、それが多大な3人に絞り、また一から拍手をさせ、二
人に絞り、そして……。という、まだるっこしい手順でウィナーが決まる。そ
の栄誉者にはまた歌わせるかと思ったら、すぐに明るくなり、あっけなくお終
い。ちょっと、拍子抜け。

 会場内には日本人もちらほら。会場内のおじさんたちは臙脂のベストを来て
、そこそこ風情あり。トイレの便器関係は黒。一応、トイレ内にタオル係の制
服おじいさんがいて、せこいペーパー・タオルを渡してくれる。ビミョー。つうか、それ犯罪防止のため?

 その後、ダウンタウンのニッティング・ファクトリーへ。実はここ、経営者
が代わり(創業者マイケル・ドルフ撤退)、もっとロックを多くやる店になっ
た(で、よけいトニック他のハコにそれ系の人達は流れているわけね)。なる
ほど、地下にあった二つのスペース(教室みたいなハコとタップ・バーという
無料ギグをやっていたバーを仕切る壁がなくなり、一つになっていた)。また
、会場内にはATMが設置され、一方で入り口横のバーでディスプレイ販売さ
れていたニッティング・ファクトリー・ワークスのCD群は一切撤去されてい
た。むーん。

 メイン・ルーム(今回、吉祥寺のスター・パインズ・カフェに作りが少し似
ているナと感じる)でこの晩に遅めの時間からやっていたのはクリス・ウィー
トリー。椅子を出してのもの。弾き語り。彼を見るのは、99年初頭にロンドン
で見ていらいだが、エフェクターを使い倒していたあのときと違い、生の感じ
が出ている、もっと強さを持つパフォーマンス。反応もけっこう熱い。彼にと
って、これは地元のライヴとなるのか。やっぱり、リズム音を出してそれにあ
わせてやったりするのだが、簡素なドラマーをやとったらもっともっと聞き味
が良くなるのにと物凄く思った。なお、地下のもう一つのスペースはM.E.A.N.
Y フェスというギター雑誌が主催する何バンドも出る催しをやっていた。ちょ
っと覗かせてもらったら、生理的に白痴きわまりない、ハード・ロックなギ
ター・インストが繰り広げられていた。

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