何かと大型表現(デューク・エリントンへの憧憬が奥にあっ
た、とも書けるのかな)を好んだ故パストリアス表現をレパー
トリーにするオーケストラ。首謀者っぽい、指揮者はピーター
・グレイヴスという人。パストリアスの地元フロリダの音楽仲
間ということだが、確かに76年のソロ・デビュー作で吹いてい
たり、日本で録られたスター奏者満載の82年同ライヴ盤で指揮
を取っていたりする。彼は9人の管楽器奏者、そしてリズム隊
を率いる。故人の意思を尊重するなら何故スティール・ドラム
やハーモニカなどかつて彼が用いた“もう一つ”の楽器奏者を採
用しないのか、なんて突っ込みはナシにしときましょう。その
ぶん(?)、ここには本人がビッグ・バンド表現においては入
れることを嫌っていたようであるギター奏者や鍵盤奏者が入っ
ている。
 
 南青山・ブルーノート東京。演目はビッグ・バンド作からの
ものだけでなく、76年作やウェザー・リポート作からも。まあ
、もとが元だけにそんなに悪いものになるはずはない。娯楽性
に富んでもいましたね。参加奏者は名のある人もいないし、特
別腕の立つ人もいないが、いろいろとソロ・パートを与えられ
た太った恰好悪い中年サックス奏者だけは別。わわっ。もう、
異常と思えるぐらい器用。笑っちゃった。上手い人は本当にど
こにでもいるもんですね。

 興行的なことを考えてか、レギャラーのベーシストに加え、
名のあるベース・フレイヤーがさらに演奏に入る。イエロージ
ャケッツ(2003年9月11日)のジミー・ハスリップにベラ・フ
レック&ザ・フレックトーンズ(2000年8月12日)のヴィクタ
ー・ウッテン。そして、明日からはウッテンに代わりジェラル
ド・ビーズリー(cf. オーディアン・ポープ・バンド、ロチェ
スター・ビーズリー・バンド)が参加という予定になっていた
が、この日はビーズリーも特別に加わっちゃった。お得な一夜
、こーゆーハプニングは生理として嬉しい。で、そのビーズー
リーさんの恰好いいこと。カーティス・メイフィールドをヤッ
ピーにしたような感じのそれ、見ているだけでいいなあと思う
。ところで、フレットレスを持っていたのはウッテンだけ。恐れ
多すぎてか難しすぎてか、オイラはおいらという矜持からか、
みんな最初からパストリアスの超絶奏法を再現しようとした人
はいませんでしたね。

 最後の曲は、ベーシスト4人揃い踏みでブリブリ。これはも
ー、ゲラゲラ笑うしかない。とともに、この過剰な行き方をし
た曲が、パストリアスの持っていた何かを一番表出していたの
ではないか。そんな酔狂にベースが重なり合う曲を聞きながら
、大昔に来たとき(日本のグリーディ・グリーンと対バンで、
クアトロでやったとき)ジョン・メデスキ(MMW、2004年1
月24日他)がしていた話を思い出す。元々、フロリダで生まれ
育った彼はパストリアスとも面識があって、高校生のころ同オ
ーケストラの日本公演(というと、82年となる?)に誘われた
ことがあって行きたかったけど、親からあんな変な人と付き合
っちゃ駄目と言われて泣く泣く断念した……。先に触れたよう
に、あのオーケストラってキーボード奏者いなかったんだけど
な。でも、メデスキの年齢とは時期的には合うか。次に彼に合
ったら、そのことを問いなおしてみよう。

                

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