小曽根真(2011年3月28日、2011年8月6日、2012年8月24日、2012年9月8日、2013年8月1日、2013年10月26日、2014年9月7日、2015年9月5日、2016年9月3日、2017年9月12日、2018年3月29日、2020年7月25日)と、上原ひろみ(2004年11月25日、2005年7月31日、2006年9月3日、2009年9月4日、2010年12月3日、2011年9月3日、2011年9月9日、2011年12月11日、2012年7月25日、2012年12月9日、2014年9月6日、2014年9月7日、2016年9月4日、2016年9月15日、2016年11月16日、2017年5月7日、2017年9月28日、2019年11月17日)。2人の臨機応変にしてけっこうシャープなやりとり〜聞く人にとっては難解なものに聞こえたところもあったのではないか〜に触れながら、ぼくは妙な計算を頭のなかでしていた。実際にはあまりないだろうが10本の指が88鍵(97鍵だったかもしれない)を抑えるとして、その音は瞬間だけでも880通りとなる。いや、弾く指を1本から2本、3本……と細かく勘定していけば、その数はべらぼうになるだろう。2人だとその総数の二乗で、それこそ天文学的な数となる。そして、その数は延々と連らなっていく。数学的思考ができない人間であるのでこの考え方が合っているかどうかはともかく、なるほど宇宙的な重なり、広がりを持つという書き方も決してデタラメではないのだとふと思ったりもした。

 小曽根はバークリー音楽大学在学中の1982年に学内コンサートの一環でコリア(2006年9月3日、2007年10月1日、2016年9月16日、2017年9月2日、2019年8月31日)と邂逅し(https://note.com/intoxicate_notes/n/n854cd4f4cdd3、参照のこと)、上原は渡米前の高校時代に彼女を認めたコリアとの共演経験を得た。そして、『レゾナンス』(2016年録音)と『デュエッツ!』(2007年録音)というコリアとのデュオによる2枚組ライヴ・アルバムを、2人はそれぞれ出している。実は本来、この公演はこの2人だけでなくチックを交えた3人による出し物として企画されていたらしい。このコロナ禍ではチックが存命でも3人でやるのは不可能だったわけだが……。

 赤坂・サントリー・ホール。満席。1席づつ開けることもなく、通常時のようにすべての席に入場者を座らせる。休憩も含めて、150分近く。それも、平常時か。おそらくインプロヴィゼイション曲で始まった1部は小曽根や上原のオリジナルや(そのブルージィな自作曲の際、彼女は真ん中より少し高めの弦を一つ切ったよう)、コリアが上原の夢枕に立ち絶対会うから2人で演奏してネと行ったというガーシュイン曲3パート、などが披露される。

 2部は、コリア絡みの楽曲が続く。まず、1曲づつソロで演奏。上原が「チルドレンズ・ソング#4」で、小曽根が「クリスタル・サイエンス」だったけ?。そして、コリアが愛好したピアノ2台のための大曲。アンコールは、「スペイン」。と、コリアへの多大な思いを置きつつ多様に進められるが、基本は上原に自由にふるまわせて、小曽根はそれに敏感に対応し、包まんとする。そんな感じではなかったか。それは『レゾナンス』でコリアが小曽根にしてくれたことを、今度は上原に小曽根がしようとしたのではないかと思った。ま、もちろん対等なものでもありましたが。

 MCは小曽根が中心になって、進める。それにしても、2人は芸達者。1部のステージへの現れ方にせよ、お辞儀の仕方にせよ。2部(両者、格好を変えて出てきた)の冒頭、ソロ・パフォーマンスの順序はジャンケンで決めたが、2人はこのホールで最初はグ〜とやった初めての人ではないか。ハハ。また、アンコールに出てきた際は、小曽根は弾くピアノ変えてみないと提案し、すると上原がこんなご時世なので、(鍵盤を)消毒してくださいと応える。そして、2人の調律師が出てきて鍵盤を丁寧に拭く。ふふ。

 この日は東京2日間の初日だが、最終日の兵庫県公演では2人の重なりはどう変わっているのか。ものすごく、興味深い。

<今日の、疑問>
 こういう会場に来ると、コンサート告知のチラシをたくさん渡されるが、それらを見て驚く。なんやかんや、クラシックを中心に外国人が出るコンサートが10月以降あるじゃないか。ぼくはこれからも当面、外国人音楽家の来日公演を見るの無理だろうと諦めていた。昨年秋も特別処置で海外の著名オーケストラの日本公演が開かれたと記憶するが、この秋のそれら外タレ公演は渡日後の扱いはどうなのか? そういえば、先日のクリエイティブマンが開いた“スーパーソニック”にも外国人のアクトが入っていたが、彼らは2週間の隔離を強いられたのか。サッカーの国際大会のバブル方式のように、来日ミュージシャンにもそれが適用されることは困難なのだろうか?

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