ブライアン・ジャクソン。ミンディ・エイベア & ザ・ボーンシェイカーズ
2019年9月27日 音楽 六本木・ビルボードライブ東京で、メッセージに富んだ詩作と秀でた同時代的ブラック・ミュージック語彙を見事に噛み合わせたギル・スコット・ヘロン(全盛期に彼はアリスタのハイ・プライオリティの契約者であったが、それは社長のクライヴ・デイヴィスが当時人気のボブ・ディランとスライ・ストーンの間をつなぐ存在として、スコット・ヘロンのことを高く評価したからだった)の音楽面を大々的に支えたブライアン・ジョンソンのショウを見る。スコット・ヘロンとジャクソンはペンシルヴァニア州のリンカーン大学で知り合い、スタラタ・イーストやアリスタ時代のアルバムは2人の連名でアルバムがリリースされた。なお、ジャクソンは少しリーダー作を出すとともに、クール&ザ・ギャング(2014年12月26日、2016年2月23日、2017年10月10日)やウィル・ダウニングからジャズ・ベーシストのチャーネット・モフェットの2019年作『Bright New Day』(Motema)まで、何人ものレコーディング・セッションに参加している。
フェンダー・ローズを弾きながら歌うジャクソンをサポートするのは在LAのミュージシャンたちか。キーボードとコーラスのレックス・キャメロン(ロンドン出身と紹介された)、ギターでNY出身のクラーレンス・ブライス(テレキャスターを持ち、カーティス・メイフィールド的な指さばきを披露)、フランス出身ベーシストのアントアーヌ・カッツ、ドラムのマーク・ホイットフィールド Jr. (有名ギタリストである父親と来日している彼、ジャクソンともやっているのか)とパーカッションのアラコイ・"ミック ホールデン"・ピートという陣容による。
スコット・ヘロンとのことを語り、彼と作った曲を生理的に悠然と披露していく。ジャクソンは決定的な味にはかなり欠けるが、何気に声量はあり、音程はスコット・ヘロンよりはくっきりしている。なんか、テリー・キャリア(2002年5月21日、2004年4月19日、2005年2月17日、2007年3月8日、2009年9月15日)の持ち味を鍵盤主体表現で開いているという所感も得たか。
90分のパフォーマンス。ジャクソンは1曲で、グラウンド・ピアノに移りソロをとったが、かなり達者。ちゃんとジャズもできる人ですね。また、1曲はスロウ持ち曲をピアノ弾き語りもする。2曲ではフルートも手にしたりもし、やはり音楽的な才能に恵まれていることを伝える。1952年生まれだから、まだまだこれからがありそうとも思えた。
▶過去の、クール&ザ・ギャング/J.T.テイラー
http://43142.diarynote.jp/200611281428510000/ J.T.テイラー
http://43142.diarynote.jp/201403051230433466/ J.T.テイラー
http://43142.diarynote.jp/201412291146465218/
http://43142.diarynote.jp/201508051544452721/ J.T.テイラー
http://43142.diarynote.jp/201602290953239524/
https://43142.diarynote.jp/201710121703595237/
▶︎過去の、テリー・キャリア
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-5.htm
http://43142.diarynote.jp/200502232039250000/
http://43142.diarynote.jp/200703101608130000/
http://43142.diarynote.jp/200909181206531984/
http://43142.diarynote.jp/200404190049350000/
その後、丸の内・コットンクラブで、ミンディ・エイベア (2009年9月20日)& ザ・ボーンシェイカーズのライヴを見る。見ることが叶わなかった前回来日公演時に、ぼくはこんなことを書いていますね。→https://43142.diarynote.jp/201510251330372218/ 下のほう
今回、スウィートピー・アトキンソンの同行はなかったが、しっかりギタリストのランディ・ジェイコブズ(2017年5月5日)はザ・ボーンシェイカーズの要の奏者として来ている。他にメンバーはキーボードのランディ・リー、ベースのベン・ホワイト、ドラムのサード・リチャードソンという面々でアフリカ系奏者が多い。ベン・ホワイト以外はミンディ・エイベア & ザ・ボーンシェイカーズのここ数作品に参加しているミュージシャンたちだ。
おお彼女、今はこうなっているんだよな。スムース・ジャズ系のアルト・サックス奏者として世に出た彼女だったが、歌うことに力を入れ、ソウル/ファンク調やアーシー系表現に移行し(2017年作には、故グレッグ・オールマンが歌っている曲もあった)、2019年新作『No GoodDead』(Pretty Good For a Girl )ではまったく明快なロック/ロックンロール傾向のなかで、彼女は歌い、アルト・サックスを吹いている。ソウル/ダンス傾向で行くキャンディ・ダルファー(2009年5月11日、2010年2月16日、2012年2月13日、2018年11月19日)に対し、ロック/アーシー傾向で行くミンディ・エイベアという説明は間違いなくできよう。
そして、この晩もそんな路線に則った生き方で、ストレートにロッキッシュに迫る。もう竹を割ったようなわかりやすい華や娯楽性の持ち方に、ラスヴェガスから帰ってきたばかりのぼくはわあアメリカっぽい、どこかヴェガスっぽいと思ってしまった。実際、金髪(に染めた?)綺麗目で太ってもいないミンディはラスヴェガスで颯爽と働く女性のタイプと重なる?
その彼女の歌にしろアルトにしろ、実にまっとう。実力者だ。それはバンドのメンバーも同じで、きっちりバンド表現(皆んな、コーラスも取る)で攻め、ちゃんとバンド名を名乗っていることにも納得。途中でドラマーがいい声で歌い始めた曲はなんとジェイムズ・ブラウン(2000年8月5日)の「コールド・スウェット」。おお、こんなロックぽいJB曲は初めて聞いた。また、途中でジェイコブズはカスタム・メイドのバンジョーを手にし、ドラマーはカホーンを叩き、キーボード奏者はカズーを担当する曲があったのだが、それはジミ・ヘンドリックスの「ヴードゥ・チャイル」。おお、いい味。それに触れながら、アメリカーナと呼ばれる表現は、米国の音楽史の襞として登録されている曲や情緒の引き出しをあけ、それを今という時間に解き放つ行為であるのだと思わせられた。ミンディ・エイベア & ザ・ボーンシェイカーズの音、フランクでチャラいようで実は深いところあります。馬鹿にしちゃいけないよ。あ、皆んなで歌ったアンコールは、ロバート・パーマーの大ヒット曲「アデイクテット・トゥ・ラヴ」でした。イエイ。
そして、ぼくのお目当てのランディ・ジェイコブズだが、さすがの演奏。デトロイト育ちの彼はスウィートピー・アトキンソンと同じくドン・ワズ(2013年2月15日、2019年6月12日、2019年6月13日、2019年6月14日)とは昵懇の間柄となるが、ピックを使わずいろんな演奏を繰り出すそのマスターぶり(数曲ではスライド・バーも用いる。エフェクターにはあまり頼らない)は、真のギター好きは彼だけ目当に行っても損はないと思える。MCによれば、ワズ(・ノット・ワズ)だけでなく、彼はギタリストでもあるボニー・レイット(2007年4月6日)のバンドにいたこともあるのか。でも、さもありなんという感じですね。
▶︎過去の、ミンディ・エイベア
https://43142.diarynote.jp/200909271554269289/
▶︎過去の、ランディ・ジェイコブズ
https://43142.diarynote.jp/201705081217396490/
▶︎過去の、キャンディ・ダルファー
https://43142.diarynote.jp/200905121053358452/
https://43142.diarynote.jp/201002171552164447/
https://43142.diarynote.jp/201202141303117620/
https://43142.diarynote.jp/201811201615047405/
▶過去の、JB
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-8.htm サマーソニック初日
▶︎過去の、JBの映画2種
http://43142.diarynote.jp/201503041619591535/
http://43142.diarynote.jp/201606281735457440/
▶過去の、ダニー・レイ
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/ 小曽根真ノー・ネーム・ホーセズvs.クリスチャン・マクブライド・ビッグ・バンド
http://43142.diarynote.jp/201412310727087161/
▶︎過去の、ザ・オリジナル・ジェイムズ・ブラウン・バンド/シンシア・ムーア。フレッド・トーマス 、トニー・クック 、ジョージ"スパイク"ニーリー
http://43142.diarynote.jp/201412310727087161/
https://43142.diarynote.jp/201806040807198626/
▶過去の、ボニー・レイット
http://43142.diarynote.jp/200704112101130000/
http://43142.diarynote.jp/200806121400260000/
▶︎過去の、ドン・ワズ
http://43142.diarynote.jp/201302181044151204/
https://43142.diarynote.jp/201906151230594715/
https://43142.diarynote.jp/201906151238565701/
https://43142.diarynote.jp/201906151238565701/
<今日の、貴さ>
実は、両公演とも入りはなぜかいまいちであった。前者は2日間公演の最終日で、後者は初日で日曜日まであと3日間ショウが持たれる。だが、それぞれのリーダーとバンド員たちはそんなことを気にするそぶりも出さず、誠心誠意パフォーマンスにあたり、東京でギグをできる感謝をあらわす。プロなら当然のことなのだが、一点の曇りもなくそれを清々しく出す面々に、ぼくは頭を垂れる。
フェンダー・ローズを弾きながら歌うジャクソンをサポートするのは在LAのミュージシャンたちか。キーボードとコーラスのレックス・キャメロン(ロンドン出身と紹介された)、ギターでNY出身のクラーレンス・ブライス(テレキャスターを持ち、カーティス・メイフィールド的な指さばきを披露)、フランス出身ベーシストのアントアーヌ・カッツ、ドラムのマーク・ホイットフィールド Jr. (有名ギタリストである父親と来日している彼、ジャクソンともやっているのか)とパーカッションのアラコイ・"ミック ホールデン"・ピートという陣容による。
スコット・ヘロンとのことを語り、彼と作った曲を生理的に悠然と披露していく。ジャクソンは決定的な味にはかなり欠けるが、何気に声量はあり、音程はスコット・ヘロンよりはくっきりしている。なんか、テリー・キャリア(2002年5月21日、2004年4月19日、2005年2月17日、2007年3月8日、2009年9月15日)の持ち味を鍵盤主体表現で開いているという所感も得たか。
90分のパフォーマンス。ジャクソンは1曲で、グラウンド・ピアノに移りソロをとったが、かなり達者。ちゃんとジャズもできる人ですね。また、1曲はスロウ持ち曲をピアノ弾き語りもする。2曲ではフルートも手にしたりもし、やはり音楽的な才能に恵まれていることを伝える。1952年生まれだから、まだまだこれからがありそうとも思えた。
▶過去の、クール&ザ・ギャング/J.T.テイラー
http://43142.diarynote.jp/200611281428510000/ J.T.テイラー
http://43142.diarynote.jp/201403051230433466/ J.T.テイラー
http://43142.diarynote.jp/201412291146465218/
http://43142.diarynote.jp/201508051544452721/ J.T.テイラー
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https://43142.diarynote.jp/201710121703595237/
▶︎過去の、テリー・キャリア
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-5.htm
http://43142.diarynote.jp/200502232039250000/
http://43142.diarynote.jp/200703101608130000/
http://43142.diarynote.jp/200909181206531984/
http://43142.diarynote.jp/200404190049350000/
その後、丸の内・コットンクラブで、ミンディ・エイベア (2009年9月20日)& ザ・ボーンシェイカーズのライヴを見る。見ることが叶わなかった前回来日公演時に、ぼくはこんなことを書いていますね。→https://43142.diarynote.jp/201510251330372218/ 下のほう
今回、スウィートピー・アトキンソンの同行はなかったが、しっかりギタリストのランディ・ジェイコブズ(2017年5月5日)はザ・ボーンシェイカーズの要の奏者として来ている。他にメンバーはキーボードのランディ・リー、ベースのベン・ホワイト、ドラムのサード・リチャードソンという面々でアフリカ系奏者が多い。ベン・ホワイト以外はミンディ・エイベア & ザ・ボーンシェイカーズのここ数作品に参加しているミュージシャンたちだ。
おお彼女、今はこうなっているんだよな。スムース・ジャズ系のアルト・サックス奏者として世に出た彼女だったが、歌うことに力を入れ、ソウル/ファンク調やアーシー系表現に移行し(2017年作には、故グレッグ・オールマンが歌っている曲もあった)、2019年新作『No GoodDead』(Pretty Good For a Girl )ではまったく明快なロック/ロックンロール傾向のなかで、彼女は歌い、アルト・サックスを吹いている。ソウル/ダンス傾向で行くキャンディ・ダルファー(2009年5月11日、2010年2月16日、2012年2月13日、2018年11月19日)に対し、ロック/アーシー傾向で行くミンディ・エイベアという説明は間違いなくできよう。
そして、この晩もそんな路線に則った生き方で、ストレートにロッキッシュに迫る。もう竹を割ったようなわかりやすい華や娯楽性の持ち方に、ラスヴェガスから帰ってきたばかりのぼくはわあアメリカっぽい、どこかヴェガスっぽいと思ってしまった。実際、金髪(に染めた?)綺麗目で太ってもいないミンディはラスヴェガスで颯爽と働く女性のタイプと重なる?
その彼女の歌にしろアルトにしろ、実にまっとう。実力者だ。それはバンドのメンバーも同じで、きっちりバンド表現(皆んな、コーラスも取る)で攻め、ちゃんとバンド名を名乗っていることにも納得。途中でドラマーがいい声で歌い始めた曲はなんとジェイムズ・ブラウン(2000年8月5日)の「コールド・スウェット」。おお、こんなロックぽいJB曲は初めて聞いた。また、途中でジェイコブズはカスタム・メイドのバンジョーを手にし、ドラマーはカホーンを叩き、キーボード奏者はカズーを担当する曲があったのだが、それはジミ・ヘンドリックスの「ヴードゥ・チャイル」。おお、いい味。それに触れながら、アメリカーナと呼ばれる表現は、米国の音楽史の襞として登録されている曲や情緒の引き出しをあけ、それを今という時間に解き放つ行為であるのだと思わせられた。ミンディ・エイベア & ザ・ボーンシェイカーズの音、フランクでチャラいようで実は深いところあります。馬鹿にしちゃいけないよ。あ、皆んなで歌ったアンコールは、ロバート・パーマーの大ヒット曲「アデイクテット・トゥ・ラヴ」でした。イエイ。
そして、ぼくのお目当てのランディ・ジェイコブズだが、さすがの演奏。デトロイト育ちの彼はスウィートピー・アトキンソンと同じくドン・ワズ(2013年2月15日、2019年6月12日、2019年6月13日、2019年6月14日)とは昵懇の間柄となるが、ピックを使わずいろんな演奏を繰り出すそのマスターぶり(数曲ではスライド・バーも用いる。エフェクターにはあまり頼らない)は、真のギター好きは彼だけ目当に行っても損はないと思える。MCによれば、ワズ(・ノット・ワズ)だけでなく、彼はギタリストでもあるボニー・レイット(2007年4月6日)のバンドにいたこともあるのか。でも、さもありなんという感じですね。
▶︎過去の、ミンディ・エイベア
https://43142.diarynote.jp/200909271554269289/
▶︎過去の、ランディ・ジェイコブズ
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▶︎過去の、キャンディ・ダルファー
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https://43142.diarynote.jp/201002171552164447/
https://43142.diarynote.jp/201202141303117620/
https://43142.diarynote.jp/201811201615047405/
▶過去の、JB
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▶︎過去の、JBの映画2種
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http://43142.diarynote.jp/201606281735457440/
▶過去の、ダニー・レイ
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/ 小曽根真ノー・ネーム・ホーセズvs.クリスチャン・マクブライド・ビッグ・バンド
http://43142.diarynote.jp/201412310727087161/
▶︎過去の、ザ・オリジナル・ジェイムズ・ブラウン・バンド/シンシア・ムーア。フレッド・トーマス 、トニー・クック 、ジョージ"スパイク"ニーリー
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https://43142.diarynote.jp/201806040807198626/
▶過去の、ボニー・レイット
http://43142.diarynote.jp/200704112101130000/
http://43142.diarynote.jp/200806121400260000/
▶︎過去の、ドン・ワズ
http://43142.diarynote.jp/201302181044151204/
https://43142.diarynote.jp/201906151230594715/
https://43142.diarynote.jp/201906151238565701/
https://43142.diarynote.jp/201906151238565701/
<今日の、貴さ>
実は、両公演とも入りはなぜかいまいちであった。前者は2日間公演の最終日で、後者は初日で日曜日まであと3日間ショウが持たれる。だが、それぞれのリーダーとバンド員たちはそんなことを気にするそぶりも出さず、誠心誠意パフォーマンスにあたり、東京でギグをできる感謝をあらわす。プロなら当然のことなのだが、一点の曇りもなくそれを清々しく出す面々に、ぼくは頭を垂れる。
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