デーモン小暮だと思っていたら、今はデーモン閣下と名乗っているの? ぼくは聖飢魔IIにも相撲にも興味を持てないで今にいたるので、この自己演出にたけたおじさんのことについてはとんと疎い。

 初、“悪魔”(笑い)。練馬 練馬文化センター 大ホールで、へえ〜こんなんという出し物を見る。邦楽器と通常のバンド楽器が重なるなか、デーモン閣下が書を読み、ときには歌う。と、書くとあまりに乱暴な説明になるが、このシリーズは今年で20年目になるという。ライヴの模様はネット配信もされていたよう。

 暗転前にまず打ち込み系サウンドが使われるなか、この後に出てくる古典和楽器それぞれの説明をするデーモン閣下の解説が流される。サウンド音の安さに少しひいたが、話自体は的確に歴史にも触れ、分かりやすくて有用。そして、デーモン閣下(朗読、歌唱)、三橋貴風(尺八、プロデュース)、福田栄香(箏、三絃)、稲葉明徳(篳篥、笛、笙)、外山香(二十絃箏)、松崎雄一(キーボード、アレンジ)、雷電湯澤(ドラム)、 石川俊介(電気ベース)、田村祐子(サンド・アート)、Kohei(サンド・アート)、という面々がステージに登場して、出し物は始まる。鍵盤とベースとドラムは聖飢魔II関係者のよう。

 <芥川龍之介を詠み謳う>という副題がつけられ、デーモン閣下は芥川龍之介の著作のパートを淀みなく読んで行く。会話の部分は落語のように声色を変える。その際、邦楽器はその音色を生かし効果音のような音を出したり、登場する人物ごとに楽器の音を振り分けて、その存在を立体的にするようなこともしていたようだ。と、他人事のように書いているのは、達者なデーモン閣下による言葉がぼくの頭にはちゃんと入ってこなかったから。ゆえに、語りがオリジナル通りなのか、少し話し口調にアレンジしているのかはもちろん、話の流れも分からなかった。朗読を聞いて笑っている人もいたので、ぼくの聴解力のなさが悪いのだろう。少し、悲しくなった。

 そして、ときに奏者たちのインストが入ったり、その演奏にあわせてデーモン閣下が歌を歌ったりもする。それら和洋楽器奏者たちによる合奏部分は”今や洋”のほうに和楽器奏者たちが寄る作法(ようは、普通のバンド楽器の音が和楽器に置き換えられる)を取り、ぼくの耳には魅力が薄い。デーモン閣下が歌ったのはムード歌謡曲やレッド・ツェッペリンの「ステアウェイ・トゥ・ヘヴン」(英語で歌われた)だったり。ツェッペリン曲の出だしのアコースティック・ギター音は箏が担当していた。

 ステージの後ろには大きなヴィジョンが用意され、そこに砂で絵を描く二人の創造所作が随時映し出される。二人の描く絵は上下にわけられて映し出され(連携し、上下繋がった絵にする場合もあり)、作風は異なるものの両者ともとても巧み。ストーリーに沿って、パッパと砂絵を描いていくドキュメンタリーは興味深い。

 といった感じで、いろんな人たちが同じゴールを見据え、様々な要素が二重三重に交錯させられいくといった出し物。デーモン閣下は相変わらずメイクとコスプレをし、きっちり虚構の人であり続ける。公と私ずっと使い分けているのはすごいな。

<昨日の、訃報>
 フランスの名映画音楽作曲家/ジャズ・ピアニストであるミシェル・ルグラン(2011年9月3日、2012年10月2日)が、26日にお亡くなりになった。享年、86歳。死因は報じられていないが、パリの自宅で死去。日本にフランスの洒脱を明快に伝えた一人でした。
▶︎過去の、ミシェル・ルグラン
https://43142.diarynote.jp/201109121452527893/
https://43142.diarynote.jp/201210060944303925/

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