1990年ミシガン州キャントン生まれの女性シンガー・ソングライターを、EXシタアター六本木で見る。エキゾな顔をした美人さん、その芸名はフランス語から取られた。10代から曲作りの才を発揮し、一時は豪州シドニーに住んだものの、現在はソングライターの街であるナッシュヴィルに住んでおり、本名はローレン・ストラーム。彼女は、この夏に『Portals』というアルバムを出したばかり。

 音出し、鍵盤、スティックで叩くパーカッション・パッドを扱う男性を横に置き、歌う。その際の手振り身振りは大きい。エレクトロ・サウンドを下敷きにする人だが、生だとアルバムよりも声が出ているようにも思えた。キーボードを弾きながら歌う曲も一つ。悪くない。また、彼女の後にはアコースティック・ギターが置かれていたが、それを持って歌ったかは不明。というのも、飲み物を引き換えするのに20分近く並ばされて、30分弱のパフォーマンスのうち頭の10分は見ることができなかったから。あの規模の会場に、小さなカウンターで販売員は二人。とんでもない欠陥ヴェニュー、というしかない。あまりにも、要改善だ。

そのフレアリーは、アウル・シティ(2009年11月24日)のオープニング・アクト。会場は、ほぼフル。アウル・シティにぜんぜん悪い印象は持っていないが、新進の彼女だけを見て、次の場に移動する。ちなみに、彼女は中国で3箇所回ってきた後に日本入りし、アウル・シティと合流したよう。日本でやった後は、ソウルに行って帰国するようだ。一方、アウル・シティは日本3箇所でライヴをやった後、韓国1箇所(フレアリーとは別の場所)、中国6箇所を回ることになっている。

▶︎過去の、アウル・シティ
http://43142.diarynote.jp/200911261250221741/

 続いて、ポーランドの若手ピカ一のジャズ・アルト・サックス奏者と認められているというクバ・ヴィエンツエックのトリオ・ギグを見る。代官山・晴れたら空に豆まいて。現在大学院に通っているようなヴィエンツエックは24歳で、25歳のポーランド人ドラマーのアルベルト・カルフ と1985年生まれの日本人ダブル・ベース奏者の小美濃悠太を伴う。

 へえ〜。演奏が始まって、すぐに頷く。ヴィエンツエックくん、ちゃんと吹ける。音が綺麗で、多彩。サブ・トーンもうまく使う。だが、技術はとうぜんとして、とても確かなジャズ観を持っているという事実がそのパフォーマンスの端々から感じられて、いいゾとなってしまう。まず、曲とアレンジが興味深くも個性的。いわゆるテーマがあってソロ部になり、テーマで終わるという定型のありかたを踏まずに、それらは起伏を抱えて流れていく。と、説明したくなるものだ。それは、散文的という言い方もできるだろう。そして、リズム・セクションもそまた散文的な行き方を助ける重なり方を見せていて、普通じゃない。ワーキング・バンドではないのに、二人は健闘していた。

 小美濃悠太の演奏には初めて触れるが、確かで太い。演奏にきっちり芯と流れを与える。一方、シンプルなセットをレギュラー・グリップ主体で叩いていたカルフも好奏者だ。ベルを垂らしていたり横に大きさの異なる小さな金属製のツボを並べ、それらも効果的に用いつつ、隙間があるのにカラフルなビートを送出。いろいろ、耳惹かれたナ。そして、ヴィエンツエックはというば、オーネット・コールマン(2006年3月27日)のファンであるのがすぐに分かり、これもうれしい。ときにはカデンツァ的な一人演奏もして、やはりクラシックにも強い奏者であるとも知らされるが、総合点高し。その一方、アラブ的と感じさせるソロも彼は繰り出していた。また1部と2部で1曲づつ、自らが扱うエレクトロ音を流す場合もあった。

 アンコールでは、レニー・トリスターノの弟子筋のウォーレン・マーシュの曲を取り上げる。これが、一番通常のジャズっぽい演奏だった。

▶︎過去の、オーネット・コールマン
http://43142.diarynote.jp/200603281335030000/

<今日の、ポーランド人>
 お二人とも色白痩身、端正で優しい顔つき。いかにも草食系男子といった感じで、日本人女子には受けが良さそう? ドラマーは短期留学などもしているようで、けっこう日本語をしゃべる。この晩は上に書いたような芸あるアコースティックなジャズ・ドラム演奏を聞かせたカルフだが、来週だかに東京でやる自分のリーダー・ライヴはエレクトロだと言っていた。
 クバ・ヴィエンツエックのトリオ名義盤(今日のリズム・セクションとは違う)『Another Raindrop』(Polish Jazz、2017年)は純アコースティック作で、より初期オーネット・コールマンを思い出させる聞き味を持つ。同作は13曲入りで各曲はどれも短め。それでいながら。創意工夫の先にちゃんとジャズの天衣無縫な自由を体現していて、推すにたる。

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