ピアノと電気ピアノのジェイムズ(2013年9月3日、2015年3月5日、2015年9月5日)、カナダ生まれの新鋭ベース奏者のマイケル・パラッツォーロ、ドラムのビリー・キルソン(2017年12月7日 )、彼のものすご〜く久しぶりとなるトリオ名義による新作『エスプレッソ』(エヴォリューション)と同じ顔ぶれによるもの。南青山・ブルーノート東京、セカンド・ショウ。

 経験豊かな才人、様々なものを見渡した末の現代ピアノ・トリオ表現と言えるものを多大な余裕とともに送り出す。ちょっとした曲調や指さばきに、なるほどのセンスあり。もう少し弾きまくってほしいと思わせるところもなくはないが、それこそは80歳近いこの伯楽の現在の音楽観の反映なのだろう。そこここに見える才気とともにウィットや娯楽性、そして統合的な今様視点がすうっと浮かび上がる。いくつかの曲ではハーモニー音を担うシンセンセ同軌音も用い、そのさい彼はヘッドフォンをつけて演奏した。

 けっこうネイザン・イースト(2011年9月27日、2014年4月22日、2018年4月17日、2018年4月17日)と似ているかもと思わせるキルソンのドラムにはへえ〜。通常は曲調に添いメロディアスにとても繊細に叩くのだが、アップな曲やソロだととんでもなく手数が多くなり、なんとも生理的に活力ある演奏をダダダダダァと繰り出す。もう片手だけでも、両手で叩くのと変わらないんじゃないかと思わす音を出していたりして。その叩き味の引きつけ具合はジェイムズもしっかりと認知するところのようで、ほとんどの曲で彼にソロ・パートを与えていた。

 一方、今回が初来日となるほぼ無名のパラッツォーロは全面的にダブル・ベースを弾く。キルソン演奏の強弱の在りかに触れるともう少しダイナミズムを求めたくなるが、実のところジェイムズは彼のことを相当買っている。まだ旅慣れもしておらず、空港の荷物のピックアップにも手間取ってしまったりもするところも可愛いなぞと、ジェイムズは思ってしまうそうだ。久しぶりにアコースティック傾向にあるトリオ作品を録ったのはパラッツォーロと出会ったことも大きいそう。

▶過去の、ボブ・ジェイムス
http://43142.diarynote.jp/201309051241384602/
http://43142.diarynote.jp/201503060912185943/
http://43142.diarynote.jp/201509211331298145/
▶︎過去の、ビリー・キルソン
http://43142.diarynote.jp/201712081715389473/

<1ヶ月前の、好々爺>
 本編が終わるとスタンディング・オヴェオションをする人もそれなりにいて、人気者だなあと思う。旧曲をやると拍手がおきたりもするしね。そんな彼がアレンジャー/フュージョン界で活動する前、25歳のときに初アルバムを出したレーベルは前衛ジャズで鳴らしたESPディスク。もちろん、内容は現代音楽要素も見ての完全なアヴァンギャルド。この前、アナログを見つけて思わず買ってしまった。そしたら、テープ音も入れていて、それはサンプリング音みたいな使い方がされていた。実は彼は話好きで、インタヴューをするととても返しが長い。この9月上旬に彼は震災以降関わりができた大船渡で演奏するために来日しており(そして、今回また来日。元気だな)、その際にインタヴューした。で、1964年デビュー作『Explosions』のことと、亡くなってしまったアリサ・フランクリンの1974年作『レット・ミー・イン・ユア・ライフ』にレコーディング参加していることも聞こうと思ったのだが、時間的にその余裕がまったくなかった。彼が組んでいるフォープレイについては大甘すぎてダメなぼくだが、そのファースト・アルバムについて今どう考えているかはそのうち聞いてみたいなあ。

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