対照的なジャズ位相を抱えた二つのグループを見る。ともに個性と意義、あり。ぼくは大きく頷きましたね。ちなみに、ドラマーはともにカノウプスを叩いていた。この日本メイカー、和太鼓の技術を応用していると聞いたことがあるけど、本当に大人気だな。

 まず、オランダ人リード奏者(この晩はテナーだけを吹いた)のユリ・ホニングのカルテットを見る。丸の内・コットンクラブ。1965年生まれの彼、ちょい古めだがブランドのジャケットを身につけている感じでなかなかカッコつけた感じの人なんだな。無粋で見え方に無頓着な人より、ぼくはずっとましに思う。サイドマンはECMから何枚ものリーダー作を出しているオランダ人ピアニストのヴォルフェルト・ブレデローデ(1974年生まれ)、アイスランド人ダブル・ベース奏者のGulli Gudmundsson(1971年生まれ)とオランダ人ドラマーのJoost Lijbaat (1967年生まれ)なり。

 その4人で、テーマとソロ部が表裏一体の感じで進んでいくような演奏を続ける。ハーモニー留意というか、各楽器音の層の重なりがなんとも魅惑的で耳惹かれる。結構、各人の音は生理的に鋭敏で耳優しいものではないかもしれない。だが、その楽器音の集積の流れが美しいため、楽ではないが、悠々と身を任すことができる。そして、これは米国発ではないジャズの今の有意義な一断面を教えるものだと大きく頷く。

 その後は、南青山・ブルーノート東京でキューバ人のピアニストであるアロルド・ロペス・ヌッサ(2014年7月19日、2016年9月3日)のトリオを見る。新ベーシストはキューバ人のガズトン・ホヤ、そしてドラマーは弟であるお馴染みのルイ・アドリアン・ロペス・ヌッサという面々。その3人はキューバ人であるがゆえ抱えるラテン音楽感性を下敷きに置く、笑顔と優しさに満ちたピアノ・トリオ表現を繰り広げる。いやはや、ジャズ技量の高さを何気にオブラートに包み広い層に向かって両手を広げるような方向を差し出す確かさたるや。同じキューバ人ピアニストのアルフレッド・ロドリゲス(2011年11月25日、2013年8月1日、2014年4月16日、2017年3月8日、2018年4月28日)もまた新作で同様の方向性にとっているが、大衆への迎合ではなく、胸を張ったジャズの楽しさ/醍醐味の開かれたアピールはここのところの現代ピアニストの動向の一つであると思う。そして、その場合、キューバ人の彼らのように育った属性を素直ににじませる場合が多い。とにかく、ロペスさん、あっぱれ。もう見終わったと、ぼくはスマイルと従属感に満たされてしまいましたよ。東京ジャズで見せた、兄と弟のピアノ連弾(昔、自宅で遊びでしていたことが元になっている)も本当にエンターテインメントとして絵になっていた。

▶︎過去の、アロルド・ロペス・ヌッサ・トリオ
http://43142.diarynote.jp/201407221705302936/
http://43142.diarynote.jp/201609201032322395/
▶過去の、アルフレッド・ロドリゲス
http://43142.diarynote.jp/201111281001329390/
http://43142.diarynote.jp/201308091149599475/
http://43142.diarynote.jp/201404191143506158/
http://43142.diarynote.jp/201703111125595848/
http://43142.diarynote.jp/201804290935481570/

<今日も、忙しい>
 午前中から、10月4日に見たエストニア人トリオであるトラッド・アタックをインタヴューする。うち二人は夫婦で、まだ3ヶ月という子供を連れ、どちらかがあやしつつ取材を受ける。もう一人のドラマーももうすぐ子供が生まれると言っていた。本国では超人気グループである3人の目標は世界中の国に行って演奏することで、もう36カ国を制覇しているそう。明日は、11時と14時に取材が入っている。今日ライヴ会場で会った人になんか疲れている顔をしていると言われ、がーん。ぼくの嫌いな言葉は、苦労とかと我慢とかです。

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