昨年(http://43142.diarynote.jp/201709160841239914/)から始まった、渋谷を舞台とするインターナショナルな音楽フェス。昨年の2日間から3日間にパワー・アップされた。初日の会場は、サラヴァ東京。

+マリーナ・セレステ
 妖艶な、キャラ立ちフランス人女性歌手。約15年前に成功を収めたマーク・コリンのヌーヴェル・ヴァーグのメンバーでもあったそうだが、そのときはいくつだったのか。女優としていくつかの映画に出ているという情報も、そのルックスからはうなずけますね。山のようにエフェクターを前に置いたアコースティック・ギターを持つ男性を従えてパフォーマンス。結構プリセットの音も用いるが、ボサノヴァっぽい曲はわりとシンプルにやっていた。一言で言えば、ちょい浮世離れしたところもある広角型の大人ポップとなるのだろうが、まずは彼女のたたずまいやそれとつながる歌唱があるアーティストなり。音楽性に黒っぽい要素はないが、なんか物腰はファンキーなところもある人で、それも魅力的だと思った。

+トーマス・カーボウ
 8弦ギター(6弦のレギュラーに、それより下の2弦を足したものを弾いていると見た)を用いるカナダ人ミュージシャン。普段はトリオでやっているようだが、この晩はサンプラーと、2つのPCを並べつつ、ソロによるパフォーマンスを聞かせる。その場で弾いた音をサンプリングしながら、音を重ねていったりもするそれは、普段からこういうスタイルでやっていると言われたら信じそう。つらつらと流れる曲調は叙情的と言えるものが多く、彼はそこに裏声詠唱を加えもする。そんな彼のギグは背後に映像をだしていたが、ビートの効いた曲にはJFKとMLKの演説映像を流しつつ、その音声も前に出すということをしていた。それ、けっこう迫力あったな。

+馬場智章カルテット
 NY在住の日本人ジャズ・マンで組まれたJ- SQUADのフロントの一角をなす、まだ20代半ばのテナー・サックス奏者。この晩はワン・ホーンの日本人カルテットでの出演で、ピアノの宮川純(2015年10月15日、2016年8月10日)、ベースの伊藤勇司、ドラムの鈴木宏紀がつく。見た目が若い人たちがアコースティックで、ストレートなジャズにどこか世代感を滲ませつつ邁進する様はやはりいいナ。曲はすべてオリジナルだったはずで、その気概もよし。今、NYで自己リーダー作を作っているようだ。彼、テナーの原点はマイケル・ブレッカー(2000年3月2日、2004年2月13日)。その前はアルトをしていて、ケニー・Gが好きだったそう。

▶︎過去の、宮川純
http://43142.diarynote.jp/?day=20151015
http://43142.diarynote.jp/201608111103309626/
▶過去の、マイケル・ブレッカー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-3.htm
http://43142.diarynote.jp/200402171832080000/

+マドレーヌ&ソロモン
 この手のフェスは未知の秀でたアーティストとの出会いにうれCとなるのを期待できるのだが、この晩はこのフランス人デュオがまさしくそうだったな。いや、その超然としたアーティスト性はすごい。そんな二人は『A Woman’s Journey』(Promise Land、2016年)というアルバムを出しているが、それは女性の生き方とも重なるアメリカの曲を取り上げた1作。彼女たちはビリー・ホリデイ、ニーナ・シモン、ジャニス・イアン、マーヴィン・ゲイ、ミニー・リパートンらの曲を実に静謐に、思慮深く開き直していて、ショウでも二人はそこからの曲を披露した。マドレーヌの歌唱はかなりタイムレスで、ちょい芝居っ気もあるかも。いわゆる米国的ソウルネスはほぼ抱えずに、毅然と欧州人としての持ち味を開く。一方、サロモンはちょい弾いただけで、すごい弾き手であると思わせる。僕がすぐに想起したのは、上品で壊れない板橋文夫(2004年8月19日、2004年10日10日、2005年11月15日、2009年1月22日、2016年9月27日)。なんか淡々と弾いていても、悪魔がペロリと舌を出す窓を横に見させるようなところがあり、ぼくはシビれた。1曲は、マレットでピアノの弦を叩くことで伴奏音を出していた。全部英語で歌っていたが、最後はコール・ポーター曲をフランス語で歌った。
▶過去の、板橋文夫
http://43142.diarynote.jp/200408202133070000/
http://43142.diarynote.jp/200410162220330000/
http://43142.diarynote.jp/200511221816310000/
http://43142.diarynote.jp/200901241915537583/
http://43142.diarynote.jp/201610100849458472/

+アラシュカ
 最後はDJもの。レユニオン島出身の、フランス系イラン人アーティストなのだが、これは楽しかった。基本PCでビートを流し、彼は歌ったり(何語だったんだろう。ショウが終わって、君がノっていていたのがステージからでも分かりありがとうとねと話しかけられたが、それを聞くのを忘れてしまった)、縦笛(トラッド系の楽器ではないそう)、パッドやシンバルを叩く。そこから湧くエスノ妙味にはニコりとならずにいられるか。最後の20分ぐらいはパリと日本を行き来していた関係で、彼と親交をだいぶ前から持っていたギタリストの前島潔が加わった。

<今日の、会場>
 26日には、芝公園・オランダ大使館で本フェスを祝うパーティが持たれ、けっこう出演者が来ていた。会場入りすると、そのさいに挨拶したり談笑したりしたアーティストやレーベル/マネージメント関係者がいて、いろいろと声をかけられる。土曜日にフェスに出るティム・マクミランとレイチェル・スノウはとても人懐こい人たちですでにメールのやりとりもし、途中までは一緒に和気藹々と見る。1番目に出たセレステとは彼女の求めに従い一緒に写真を撮ったのだが、その弾けた写真が公にならないことを祈る。ところで、マデリーン&ソロモンはこの後いくつかの会場でライヴをするが、フェスとツアーを重ねる人たちもいるようだ。馬場も今この陣容でツアー中だ。

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