青山・マンダラで、ノルウェーの港都市であるベルゲンからやってきたストーム・ウェザー・シャンティ・クワイアと名乗る6人組を見る。船乗りの間で長く受け継がれてきた労働歌たるシャンティを歌う集団で、うち4人は歌うとともにアコースティック・ギター、マンドリン、アコーディオン、パーカッションを奏でる。音大でシャンティを研究もし、その後セイラーマンとして帆船に乗っていたホーコン・ヴァトレにより18年前に結成。現在までずっと変わらぬメンバーで活動していて、来日は3度目となるという。そのヴァトレはずっと帆船を持つ会社に所属し、現在はジェネラル・マネージャーとして内勤職についている。構成員みんな40とか41歳とかで船乗り関連者は彼だけ。ヴァトレがこのクワイアを組んだのは、じじいしか歌わない古臭い歌となっていたシャンティを今に蘇らせたかったからだそう。打楽器も叩くおじさんはメタル・バンドにいても不思議はないルックスをしているなと思ったら、普段は実際その手のバンドでドラムを叩いているという。

 いろんな根っこを持つ船員曲を、はつらつ元気に披露して行く。けっこう英語の曲が多いが、それは国境を超えていく船乗りたちにシェアされてきたゆえ。ケルト調やシンガー・ソングライター調、はてはザ・ポーグス(2005年7月29日)を想起させるものまで、曲調は本当にいろいろだったな。

 たまたまぼくが座った席は、70歳ぐらいのおじいさんたちが集団でいたテーブル回りで、その彼らはときどき一緒に歌を口ずさむ。そしたら、1部の最後の曲は豪快な英語版「ソーラン節」(なるほど、これは日本の漁師歌ですね)。その際、おじいさんたちは皆ステージに上がり一緒に歌う。おお。休憩の間に隣の老紳士にいろいろと話をうかがう。そしたら、彼もまた船員だったそうで、今は“帆船日本丸を愛する男性合唱団”というのを仲間たちでやっており、彼らはベルゲンに行って一緒に歌ったりもしたのだとか。面々は横浜中心地に保存展示されている帆船日本丸を練習場所としているという。実は翌日にヴァトレに取材することになっているので、彼との話はいい予習になりました。おじいさんたち、6月1日に鎌倉美術館大ホールでマチネー公演をするという。ちなみにストーム・ウェザー・シャンティ・クワイア版「ソーラン節」は2011年来日の際に覚え、今では地元のコンサートでも毎回歌う大人気曲となっているそうだ。

▶過去の、ザ・ポーグス
http://43142.diarynote.jp/200508042335560000/

 その後は、六本木・ビルボードライブで、ジョニー・ギルのショウを見る。ボビー・ブラウンの後釜としてニュー・エディションに参加したこともある歌えるシンガーだが、やっぱり実力と訴求力はたっぷり。ホンモノはやっぱり違うと大きくうなずきました。
 
 お腹はぽっこり出ていたりもするのだが、赤いスーツ(靴はキラキラのもの)姿が格好いい。それで、つかみはOKという感じ。そして、歌えばもう、とってもたっぷりこってり。古臭くない曲調のものを歌ってもしっかりと往年のR&Bの良さが滲み出るというわけで、うふふっふだな。ときどき繰り出す、ニュー・エディション流れのスッテップもお茶目で目を引く。文句があるとすれば、ヴォーカルにリヴァーブがかかり気味であると感じてしまったことと、プリセットの女性コーラス音が用いられたこと(←やはり、しらける)。バンドはヘッドフォンをつけたキーボード、同じくベース(鍵盤も多用)、さらにギター、ドラムという編成で問題なし。

<今日の、残念。そして、祝福>
 本当はジョニー・ギル公演の前には、市ヶ谷・セルバンテス文化センターで、ガリシア州のシンガー・ソングライターであるウシーアのライヴを見ようと思っていた。無料で、登録制。プロダクツを少し聞いた感じだと誘い感大ありで、海の感覚も覚えさせる。だが、ストーム・ウェザー・シャンティ・クワイアにインタヴューすることになり、別の海の男たち(?)を優先させたわけ。彼女は、どんなパフォーマンスだったのかなー。ほんといろいろな公演が目白押しで、うれしい困惑だなー。ところで、ストーム・ウェザー・シャンティ・クワイアはステージに出てきたとき、客を起立させ、1曲ぶちかます。それは、国歌。今日がノルウェーのナショナル・デイと名付けられた憲法制定日なのだそう。

コメント