CANADIAN BLAST
2018年2月6日 音楽 渋谷・duo MUSIC EXCHANGEで、カナダのインディ・アーティストが4組出る<カナディアン・ブラスト>という催しを見る。すでにカナダの担い手のショーケースとして東京で何度も行われていて、かつては<カナディアン・ロックンロール>という名前でも催されたこともあった。一般のお客も入れるこの晩には、4組の担い手が登場した。
*ブライト・ライチャス
ウィニペグの5人組で、ヴォーカルは喉を潰しつつ高めの声で歌う。シンガー、ギター2、ベース、ドラム。ベーシスト(プリセット音は彼が扱っていたか)とギターの人血はキーボードも扱う。最初はメロディックなハード・ロック・バンドかと思ったら、要所でキーボード音が効き、ドラムはダンス調四つ打ちビートも曲によっては叩くなど、いろんな要素を織り込もうとしているのが良く分かる。ときに仕掛けに凝らんとするあたりは、世界的に多大な成功を収めている先達、ラッシュからの影響も認めることもできた。
*カンドル
モントリオール在住らしい、2枚アルバムを出している女性シンガー・ソングライター。本人がギターを弾きながら歌い、ときにコーラスもつける男性ギタリストがサポート。見た目はわりと健やかといか病んでいないのだが、曲調はけっこうブルージーで、ゴシックという形容もあり。歌声は結構明るめで、その離れた要素の重なりが興味深い。曲も質はあった。
*ルカ・フォーガル
これは、まっとうなシンガー・ソングライター。まず、ちょい擦れが入る歌声が魅力的。生ギター弾き語りとローズ音色のキーボードの弾き語りを披露したが、ぼくは後者のほうが好き。その鍵盤の押さえ方は少しゴスペルっぽいノリをもっていて、それを下敷きに歌う様は訴求力があった。会場にいた同業先輩も同意見。彼はポール・サイモンのエレピ音を思い浮かべたと言っていた。
*USS
トロントを拠点とするとっぽい風情のポップ・エレクトロ二人組で、歌と生ギターくんと歌とDJの二人からなる。そこに、ドラマーも加わった3人でパフォーマンス。グループ名は、ユビキタス・シナジー・シーカーの略とか。ときに後うちビートを伴う親しみやすい楽曲をくだけたパーティ感覚(DJは三角倒立をしてスクラッチングをするなどもした)のもと送り出してくれる。屈託なく、あっけらかん。そのさばけた娯楽感覚は通常我々が持つカナディアン音楽のイメージをくつがえす部分があるかも。
<今日の、取材>
昼間、<カナディアン・ブラスト>を企画している、トロントにオフィスを置くCIMA(Canadian Independent Music Association)の会長のスチュアート・ジョンストンと輸出マネージャーのトリーシャ・カーターにインタヴューする。ソトコト誌に記事が出ます。二人とも、落ち着いた大人だったな。ジョンストンは今の職場は8年目で、それ以前はエンタメ系ライターや政策提出の職などについてきており、すでに20年カナダ音楽の輸出促進業務を担っているというカーターはかつてポップ・ロック・バンドのマネージャーをやっていたこともあったとか。CIMAはすでに40年もの歴史を持ち、カナダの英語圏や英語で歌うインディ・アーティストを海外にプロモートしていて、<カナディアン・ブラスト>もその一環にある。その資金の多くは政府から出ているという。そして、各国の大使館とも密接に協調し、活動している。
来日するアーティストを個別に援助するということは欧州の諸国もいろいろとやっているが、ひとつのパッケージとして大々的にやっているのは、今カナダだけかもしれない。例えば、CIMA は著名な米国のSXSWにも大々的に関連アーティストを送り出しているようだが、日本で継続的にこうした手間と予算のかかることを持っているのは、彼らの日本市場への評価、期待にほかならない。
ああそうかと思ったのは、自国アーティストの育成のため、ラジオ放送の35パーセントはカナダ人アーティストの曲をかけなければならないという法律がだいぶ前からあるそう。隣接して米国のようなエンターテインメト大国があるとそれも致し方はないか。だが、ニール・ヤング(2001年7月28日)、ジョニ・ミッチェル、ザ・バンドやレナード・コーエンから、アーケイド・ファイア(2005年8月13日)、ジャスティン・ビーバーやドレイクまで、米国勢を凌駕するような担い手も順次同国は送り出しているわけで、3600万人という人口からみると才人輩出の度合いは非常に高いものであるのではないかとも思う。
そして、米国と比するなら、ガツガツしていなくて、思慮にも富み、自然体であるのはカナダ人の美点だろう。ティーガン&サラ(2006年1月11日)をはじめ、仕事で米国に行っても住むのはカナダしかないというアーティストは多い。ニール・ヤングが世に出た頃と違い、ロックの米国中心主義は少し弱まっているし、交通網やインターネットの発達もまたその態度に利するだろう。また、インディーで自分のやりたいことをやる方が吉と考える独立独歩なカナダの担い手が多いからこそ、CIMAのような団体が機能するということもあるだろう。
自然が豊かで、移民や同性愛にも優しいリベラルな国。そんなふうにぼくはカナダについてイメージするが、そういう部分が同国の音楽にいいほうに働いているところは絶対にあると思う。ぼくがカナダ人の音楽に魅力を感じるのはそういう部分ではないか。また、ジョンストンたちの話を聞いていて思ったのは、彼らはいい意味で合理的であるということ。それ、ドライなのではなく、楽に自分であるための賢人の振る舞いであると、ぼくは感じた。
あと、ウィンター・スリープ(2008年2月25日)は今も活動しているという。わあ、うれしい!
▶過去の、ニール・ヤング
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-7.htm フジ・ロック
▶︎過去の、アーケイド・ファイア
http://43142.diarynote.jp/200508152007550000/
▶︎ティーガン&サラ
http://43142.diarynote.jp/200601141744570000/
▶︎過去の、ウィンター・スリープ
http://43142.diarynote.jp/200802262046380000/
*ブライト・ライチャス
ウィニペグの5人組で、ヴォーカルは喉を潰しつつ高めの声で歌う。シンガー、ギター2、ベース、ドラム。ベーシスト(プリセット音は彼が扱っていたか)とギターの人血はキーボードも扱う。最初はメロディックなハード・ロック・バンドかと思ったら、要所でキーボード音が効き、ドラムはダンス調四つ打ちビートも曲によっては叩くなど、いろんな要素を織り込もうとしているのが良く分かる。ときに仕掛けに凝らんとするあたりは、世界的に多大な成功を収めている先達、ラッシュからの影響も認めることもできた。
*カンドル
モントリオール在住らしい、2枚アルバムを出している女性シンガー・ソングライター。本人がギターを弾きながら歌い、ときにコーラスもつける男性ギタリストがサポート。見た目はわりと健やかといか病んでいないのだが、曲調はけっこうブルージーで、ゴシックという形容もあり。歌声は結構明るめで、その離れた要素の重なりが興味深い。曲も質はあった。
*ルカ・フォーガル
これは、まっとうなシンガー・ソングライター。まず、ちょい擦れが入る歌声が魅力的。生ギター弾き語りとローズ音色のキーボードの弾き語りを披露したが、ぼくは後者のほうが好き。その鍵盤の押さえ方は少しゴスペルっぽいノリをもっていて、それを下敷きに歌う様は訴求力があった。会場にいた同業先輩も同意見。彼はポール・サイモンのエレピ音を思い浮かべたと言っていた。
*USS
トロントを拠点とするとっぽい風情のポップ・エレクトロ二人組で、歌と生ギターくんと歌とDJの二人からなる。そこに、ドラマーも加わった3人でパフォーマンス。グループ名は、ユビキタス・シナジー・シーカーの略とか。ときに後うちビートを伴う親しみやすい楽曲をくだけたパーティ感覚(DJは三角倒立をしてスクラッチングをするなどもした)のもと送り出してくれる。屈託なく、あっけらかん。そのさばけた娯楽感覚は通常我々が持つカナディアン音楽のイメージをくつがえす部分があるかも。
<今日の、取材>
昼間、<カナディアン・ブラスト>を企画している、トロントにオフィスを置くCIMA(Canadian Independent Music Association)の会長のスチュアート・ジョンストンと輸出マネージャーのトリーシャ・カーターにインタヴューする。ソトコト誌に記事が出ます。二人とも、落ち着いた大人だったな。ジョンストンは今の職場は8年目で、それ以前はエンタメ系ライターや政策提出の職などについてきており、すでに20年カナダ音楽の輸出促進業務を担っているというカーターはかつてポップ・ロック・バンドのマネージャーをやっていたこともあったとか。CIMAはすでに40年もの歴史を持ち、カナダの英語圏や英語で歌うインディ・アーティストを海外にプロモートしていて、<カナディアン・ブラスト>もその一環にある。その資金の多くは政府から出ているという。そして、各国の大使館とも密接に協調し、活動している。
来日するアーティストを個別に援助するということは欧州の諸国もいろいろとやっているが、ひとつのパッケージとして大々的にやっているのは、今カナダだけかもしれない。例えば、CIMA は著名な米国のSXSWにも大々的に関連アーティストを送り出しているようだが、日本で継続的にこうした手間と予算のかかることを持っているのは、彼らの日本市場への評価、期待にほかならない。
ああそうかと思ったのは、自国アーティストの育成のため、ラジオ放送の35パーセントはカナダ人アーティストの曲をかけなければならないという法律がだいぶ前からあるそう。隣接して米国のようなエンターテインメト大国があるとそれも致し方はないか。だが、ニール・ヤング(2001年7月28日)、ジョニ・ミッチェル、ザ・バンドやレナード・コーエンから、アーケイド・ファイア(2005年8月13日)、ジャスティン・ビーバーやドレイクまで、米国勢を凌駕するような担い手も順次同国は送り出しているわけで、3600万人という人口からみると才人輩出の度合いは非常に高いものであるのではないかとも思う。
そして、米国と比するなら、ガツガツしていなくて、思慮にも富み、自然体であるのはカナダ人の美点だろう。ティーガン&サラ(2006年1月11日)をはじめ、仕事で米国に行っても住むのはカナダしかないというアーティストは多い。ニール・ヤングが世に出た頃と違い、ロックの米国中心主義は少し弱まっているし、交通網やインターネットの発達もまたその態度に利するだろう。また、インディーで自分のやりたいことをやる方が吉と考える独立独歩なカナダの担い手が多いからこそ、CIMAのような団体が機能するということもあるだろう。
自然が豊かで、移民や同性愛にも優しいリベラルな国。そんなふうにぼくはカナダについてイメージするが、そういう部分が同国の音楽にいいほうに働いているところは絶対にあると思う。ぼくがカナダ人の音楽に魅力を感じるのはそういう部分ではないか。また、ジョンストンたちの話を聞いていて思ったのは、彼らはいい意味で合理的であるということ。それ、ドライなのではなく、楽に自分であるための賢人の振る舞いであると、ぼくは感じた。
あと、ウィンター・スリープ(2008年2月25日)は今も活動しているという。わあ、うれしい!
▶過去の、ニール・ヤング
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-7.htm フジ・ロック
▶︎過去の、アーケイド・ファイア
http://43142.diarynote.jp/200508152007550000/
▶︎ティーガン&サラ
http://43142.diarynote.jp/200601141744570000/
▶︎過去の、ウィンター・スリープ
http://43142.diarynote.jp/200802262046380000/
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