エリカはエリカ、まさにディーヴァだった! もうそれだけで、文章を止めたいぐらい。六本木・ビルボードライブ東京。20時から(15分遅れで始まった)1日1回の公演で、ほぼ90分の尺だった。しかし、こんな距離でエリカ・バドゥ(2000年11月19日、2006年4月2日。2012年3月2日)のショウが見れるなんてという感激はデカい。前回ぼくが見たのはジャカルタのフェスであったが、あのアリーナ公演の規模を知っていると、これはほんと夢のよう。
イントロが流れるなか出てきた彼女はぽっくりっぽい底の高い靴を履いていてゆっくり出てきた。なんか花魁のような風情ぢゃんと、ぼくは思った。その格好は理解不能、ヤンキーぽいという形容もありか。髪の毛は長いのが爆発していて、迫力満点。ショウが進むごとに帽子や上着などをとり(彼女はジーンズのサロペットを身につけていたのだな)、どんどん彼女の地が出てくるという演出はソウル・ショウにおいては珍しいものではないが、効果的。殿上人的なスターがどんどん素顔を露わにしているという思いを得ることができ、ナイス。
そして、バドゥは小鳥の鳴き声が流れるなかハローハローと詠唱し始めたと思ったら、”Hello, it’s me. I’ve thought about us for a long, long time”と歌い出す。おお、トッド・ラングレンの超有名曲「ハロー・イッツ・ミー」の一節じゃないか。びっくりだあ。中央に立つ彼女の周りにはPC、コントラーラー、鳴り物、ターンテーブルの形をしたパーカッション・パッドなどが置いてあったが、用いたのはパーカッション・パッドだけだったか。前半は彼女がそれと戯れるように鼓動音を出し、それに呼応するようにバンドが音をつけていって曲が始まるというようなことが数度あった。
2曲目が早くもバラードであり、クリック音だけを下敷きにコーラス陣と一緒にドゥーワップとゴスペルが重なったようなことをやったり、基本ピアノを一本で歌う曲があったり。そんな局面があったことが示唆するように、今回はそのヴォーカルのスキル、訴求力を前に出していたと指摘できるのではないか。前回ぼくが見た際とは異なり今回は自ら歌にエフェクトをかけることもあまりなく、もっと質実剛健でまっすぐ。もちろん、伴奏陣はとても整備されていて、いいバンド。バドゥはバンドをぐいぐい引っ張り、生のサウンドと拮抗するのだが、今回はより歌の力を前に出しているようにぼくには思われた。
バンドは、キーボードのRCウィリアムズJr.,ザ・ソウル・クエリアンズ全盛期の流儀で作った『ママズ・ガン』(モータウン。2000年)からの付き合いを持つベースのブレイロン・レイシー(メンバーの中では一番の実績を持つ人で、現代ゴスペルのカーク・フランクリン〜2009年9月18、2009年9月18日〜のバンドにもいた)、ドラムのマイケル・ミッチェルA.K.A,ブラック・ダイナマイト(2015年9月30日)、打楽器のフランク・モカ(2016年1月25日、2016年10月11日)、DJのラシャド・リンゴ・スミスという演奏陣に、ラ・ケンドラ・ジョンソンとテロン・オースティンとデュランド・バーナーという3人の男女シンガーが加わる。なんか、キーボード奏者の奥にもう一人見えたような気もするが。
そうした陣容のバンドを掌握し、その頂点に当人が立つという実演の総体(普段はこのハコにはないと思われるレーザー光線のような照明もステージ上に設置されていて、それは効果的だった)は、これは今の時代のR&Bを真っ向から受けているという大きな手応えを山ほど与える。新譜はもう7年も出していないのに、現役感はたっぷり。これこそは今の前線にある大衆音楽のメインストリームなのだという凄みのようなものも横溢していて、そりゃ降参してしまう。
以前はもっとツっぱりシアトリカルにショウを進めていた記憶があるが、彼女は機嫌良さそうに最前列の人と握手をしたり、最終曲では聞き手と同じレヴェルに立ってコール&レスポンスを楽しむなど、ライヴをすることを健やかに享受している感じがよかった。それ、彼女にとっては破格に小さい会場であるということがプラスに働いていたのか否か?
▶過去の、エリカ・バドゥ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200604050124430000/
http://43142.diarynote.jp/201203062004221304/
▶過去の、カーク・フランクリン
http://43142.diarynote.jp/200909251530436151/
http://43142.diarynote.jp/201702081152242280/
▶︎過去の、フランク・モカ
http://43142.diarynote.jp/201601260728484520/ クリス・デイヴ
http://43142.diarynote.jp/201610141747514263/ クリス・デイヴ
▶︎過去の、マイケル・ミッチェル
http://43142.diarynote.jp/201510021221454336/ スタンリー・クラーク
<今日の、カズオ>
なんとノーベル文学賞は、英国人カズオ・イシグロに決まった。実は在英ジャズ歌手のステイシー・ケント(2012年3月12日、2014年4月22日)と懇意にしているようで、過去「ポストカード・ラヴァーズ」とか「ザ・サマー・ウィ・クロスト・ユーロップ・イン・ザ・レイン」とか「ウォルター・オー・ウォルター」とか「ザ・チェンジング・ライツ」など、彼はケントの夫でサックス奏者のジム・トムリンソン(2012年3月12日、2014年4月22日)との共作のもといろいろ彼女に歌詞を提供している。そして、ケントのもうすぐ出る新作『アイ・ノウ・アイ・ドリーム』に収録されている8分の6拍子曲「Bullet Train(新幹線)」という曲の歌詞もイシグロによる。それ新幹線の車内アナウンスも冒頭にインサートされる日本ソング(”東京から名古屋へ”と一節も歌詞にはあるが、「名古屋、名古屋です。この新幹線は東京行きです」という逆向きの車内案内女性声を録った断片が入れらてれているのはご愛嬌)だが、すげえタイムリー。発売元のソニー、今大騒ぎじゃね? きっと書店には彼のコーナーができるんだろうけど、この新作や既発作も一緒に並ぶのかな? しかし、イシグロさん、ちゃんと作家になる前にはロック・ミュージシャンを志したとも言われる。村上春樹とはお互いを認めあっているようだが、この二人の大作家はともに普通の人以上に音楽好きという共通点を持っているのか。ちなみに、その『アイ・ノウ・アイ・ドリーム』、映画音楽のオーケストレーションの方面でロンドンで活躍する新進トミー・ローレンス(2008年にザ・ロイヤル・アカデミー・オブ・ミュージックのジャズ・コースをサックス専攻で卒業している)のひんやりと広がる管弦楽アレンジがとても気持ちいい。以下は、彼のサウンドクラウド。こちらを聞くと、保守的な豊饒さををしこたま出せる人物という印象を与えるか。https://soundcloud.com/tommy-laurence
▶過去の、ステイシー・ケントとジム・トムリンソン
http://43142.diarynote.jp/201203131840477844/
http://43142.diarynote.jp/201404260858553785/
イントロが流れるなか出てきた彼女はぽっくりっぽい底の高い靴を履いていてゆっくり出てきた。なんか花魁のような風情ぢゃんと、ぼくは思った。その格好は理解不能、ヤンキーぽいという形容もありか。髪の毛は長いのが爆発していて、迫力満点。ショウが進むごとに帽子や上着などをとり(彼女はジーンズのサロペットを身につけていたのだな)、どんどん彼女の地が出てくるという演出はソウル・ショウにおいては珍しいものではないが、効果的。殿上人的なスターがどんどん素顔を露わにしているという思いを得ることができ、ナイス。
そして、バドゥは小鳥の鳴き声が流れるなかハローハローと詠唱し始めたと思ったら、”Hello, it’s me. I’ve thought about us for a long, long time”と歌い出す。おお、トッド・ラングレンの超有名曲「ハロー・イッツ・ミー」の一節じゃないか。びっくりだあ。中央に立つ彼女の周りにはPC、コントラーラー、鳴り物、ターンテーブルの形をしたパーカッション・パッドなどが置いてあったが、用いたのはパーカッション・パッドだけだったか。前半は彼女がそれと戯れるように鼓動音を出し、それに呼応するようにバンドが音をつけていって曲が始まるというようなことが数度あった。
2曲目が早くもバラードであり、クリック音だけを下敷きにコーラス陣と一緒にドゥーワップとゴスペルが重なったようなことをやったり、基本ピアノを一本で歌う曲があったり。そんな局面があったことが示唆するように、今回はそのヴォーカルのスキル、訴求力を前に出していたと指摘できるのではないか。前回ぼくが見た際とは異なり今回は自ら歌にエフェクトをかけることもあまりなく、もっと質実剛健でまっすぐ。もちろん、伴奏陣はとても整備されていて、いいバンド。バドゥはバンドをぐいぐい引っ張り、生のサウンドと拮抗するのだが、今回はより歌の力を前に出しているようにぼくには思われた。
バンドは、キーボードのRCウィリアムズJr.,ザ・ソウル・クエリアンズ全盛期の流儀で作った『ママズ・ガン』(モータウン。2000年)からの付き合いを持つベースのブレイロン・レイシー(メンバーの中では一番の実績を持つ人で、現代ゴスペルのカーク・フランクリン〜2009年9月18、2009年9月18日〜のバンドにもいた)、ドラムのマイケル・ミッチェルA.K.A,ブラック・ダイナマイト(2015年9月30日)、打楽器のフランク・モカ(2016年1月25日、2016年10月11日)、DJのラシャド・リンゴ・スミスという演奏陣に、ラ・ケンドラ・ジョンソンとテロン・オースティンとデュランド・バーナーという3人の男女シンガーが加わる。なんか、キーボード奏者の奥にもう一人見えたような気もするが。
そうした陣容のバンドを掌握し、その頂点に当人が立つという実演の総体(普段はこのハコにはないと思われるレーザー光線のような照明もステージ上に設置されていて、それは効果的だった)は、これは今の時代のR&Bを真っ向から受けているという大きな手応えを山ほど与える。新譜はもう7年も出していないのに、現役感はたっぷり。これこそは今の前線にある大衆音楽のメインストリームなのだという凄みのようなものも横溢していて、そりゃ降参してしまう。
以前はもっとツっぱりシアトリカルにショウを進めていた記憶があるが、彼女は機嫌良さそうに最前列の人と握手をしたり、最終曲では聞き手と同じレヴェルに立ってコール&レスポンスを楽しむなど、ライヴをすることを健やかに享受している感じがよかった。それ、彼女にとっては破格に小さい会場であるということがプラスに働いていたのか否か?
▶過去の、エリカ・バドゥ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200604050124430000/
http://43142.diarynote.jp/201203062004221304/
▶過去の、カーク・フランクリン
http://43142.diarynote.jp/200909251530436151/
http://43142.diarynote.jp/201702081152242280/
▶︎過去の、フランク・モカ
http://43142.diarynote.jp/201601260728484520/ クリス・デイヴ
http://43142.diarynote.jp/201610141747514263/ クリス・デイヴ
▶︎過去の、マイケル・ミッチェル
http://43142.diarynote.jp/201510021221454336/ スタンリー・クラーク
<今日の、カズオ>
なんとノーベル文学賞は、英国人カズオ・イシグロに決まった。実は在英ジャズ歌手のステイシー・ケント(2012年3月12日、2014年4月22日)と懇意にしているようで、過去「ポストカード・ラヴァーズ」とか「ザ・サマー・ウィ・クロスト・ユーロップ・イン・ザ・レイン」とか「ウォルター・オー・ウォルター」とか「ザ・チェンジング・ライツ」など、彼はケントの夫でサックス奏者のジム・トムリンソン(2012年3月12日、2014年4月22日)との共作のもといろいろ彼女に歌詞を提供している。そして、ケントのもうすぐ出る新作『アイ・ノウ・アイ・ドリーム』に収録されている8分の6拍子曲「Bullet Train(新幹線)」という曲の歌詞もイシグロによる。それ新幹線の車内アナウンスも冒頭にインサートされる日本ソング(”東京から名古屋へ”と一節も歌詞にはあるが、「名古屋、名古屋です。この新幹線は東京行きです」という逆向きの車内案内女性声を録った断片が入れらてれているのはご愛嬌)だが、すげえタイムリー。発売元のソニー、今大騒ぎじゃね? きっと書店には彼のコーナーができるんだろうけど、この新作や既発作も一緒に並ぶのかな? しかし、イシグロさん、ちゃんと作家になる前にはロック・ミュージシャンを志したとも言われる。村上春樹とはお互いを認めあっているようだが、この二人の大作家はともに普通の人以上に音楽好きという共通点を持っているのか。ちなみに、その『アイ・ノウ・アイ・ドリーム』、映画音楽のオーケストレーションの方面でロンドンで活躍する新進トミー・ローレンス(2008年にザ・ロイヤル・アカデミー・オブ・ミュージックのジャズ・コースをサックス専攻で卒業している)のひんやりと広がる管弦楽アレンジがとても気持ちいい。以下は、彼のサウンドクラウド。こちらを聞くと、保守的な豊饒さををしこたま出せる人物という印象を与えるか。https://soundcloud.com/tommy-laurence
▶過去の、ステイシー・ケントとジム・トムリンソン
http://43142.diarynote.jp/201203131840477844/
http://43142.diarynote.jp/201404260858553785/
コメント