まず、スイスのピアノ・トリオのヴェインを中目黒・楽屋で見る。ピアノのミカエル・アルベンツ 、ベースのトーマス・レーンス、ドラムのフロリアン・アルベンツ(完全に、レギュラー・グリップで叩く)からなり、10年強一緒にやっている。レーンズは1981年生まれで、他の二人も同年代か。MCはアルベンツがしたが、彼は少し年長かもしれない。今回が初来日となるという。
事前にちらりと彼らの音を聞き、けっこう米国的な、丁々発止するジャズをやるという印象を得た。この<ライヴ三昧>に出てくる多くの欧州のジャズの担い手はユーロ的感性を介するオルタンティヴ視点を加えたジャズを披露しているが、それらと比すとヴェインはストレート。そんな彼らは、デイヴ・リーブマンやグレッグ・オズビーといったUSジャズの実力者たちを迎えたアルバムをリリースしているというのも、その要点を示唆するものだろう。……と、思っていたのだが、実演に触れ、やはり欧州性は出していると感じた。程度の差こそあれ。
仕掛けを伴うオリジナルあり、スタンダードの「サマータイム」あり(これは、彼らの飛躍手腕をを示したくて取り上げていると思えた)、クラシック作曲家モーリス・ラヴェルの「亡き女王のためのパヴァーヌ」もあり。このクラシック曲は、最初ドラマーのサム・ピアノのソロから始められた。ま、なんにせよ、確かな技量やジャズ感覚あってこそのピアノ・トリオ表現を聞かせるのは間違いないわけだが。次の予定があるため、ファースト・ショウだけを見て退出。通して見たら、また別の所感を覚えたかもしれない。
次は、六本木・ビルボードライブ東京(セカンド・ショウ)。会場に降りて、おやまあ。ステージ上に所狭しといっぱい機材が置いてある。ギターは7本立てかけてあったか。そんなに使われることはなかったが。出し物は、鈴木茂(2013年8月11日、2010年11月21日、2015年10月25日、2015年11月19日)の1975年作『バンド・ワゴン』をまんまやっちゃいます、というもの。
「風をあつめて」や「チュー・チュー・ガタゴト」はラジオから流れたのを聞いて小僧の頃から好きだったが、フォークぽいぬるさを覚えたためか はっぴいえんどにハマったことはなく、鈴木茂の『バンド・ワゴン』も存在は知っていたものの、手を伸ばしたことはなかった。それが、1990年前後だと思うが、ひょんなことから同作を聞いたら(多分、クラウンが再発し、CDが送付されてきたのだと思う)、これぞリトル・フィート(2000年12月8日、2012年5月22日)の最良の日本人のアダプテイション表現と感激しちゃったんだよなあ。
歌とギターの鈴木を、スタジオ界の重鎮がサポートする。キーボードの佐藤準 (2008年4月20日)と柴田俊文 、ベースの田中章弘、ドラムの長谷部徹 。個々のプレイヤーで一番いいなと思ったのは、田中。全盛期の、ケニー・グラッドニー(2016年5月24日)みたいじゃんと思った。そこに、パーカッション奏者がいた方が良かったかもしれない。
改めて、スライドで弾く曲が多かったんだんだなあと頷く。そうか、鈴木はちゃんと小指にスライド・バーをはめて演奏するんだな。それ、コントロールが格段に楽なので、奏法が狭くなりはするものの人差し指や薬指にはめる奏者もいる。こんなにスライド・ギターを弾くのは、彼も久しぶりだったのではないか。終盤は歌声がヘロったが、漂う感じがある歌声も魅力的だし、一部の曲を聞くとコードの広がりの妙をちゃんと知っていることもおおいに伝わる。
けっこう天然ぽい所作を見せる彼を見つつ、あまり老けていないと感じた。アルバムを最初に聞いたときの感激はなかったが、日本のロック史の襞を感じることもできたし、見ることができて良かったとは思えた実演でした。
▶過去の、鈴木茂
http://43142.diarynote.jp/?day=20101121
http://43142.diarynote.jp/?day=20130811
http://43142.diarynote.jp/201510290731105395/
http://43142.diarynote.jp/201511200934467321/
▶︎過去の、佐藤準
http://43142.diarynote.jp/?day=20080420
▶過去の、リトル・フィート
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-12.htm
http://43142.diarynote.jp/201205301327209613/
▶︎過去の、ケニー・グラッドニー
http://43142.diarynote.jp/201605250715068712/
<今日のライヴに対しての、覚書いくつか>
▶︎楽屋というハコには本当にひさしぶりに行ったら、地下にあったトイレが1階に移っていた。グランド・ピアノも置いてあり、ちゃんと食事もサーヴする大人の店ですね。▶︎そこに到るまでの、商店街を歩くのも楽しかった。東横線高架の下に商業施設が大々的に入ったりもし、中目黒は今一段と活気があるんだろうな。▶︎「亡き女王のためのパヴァーヌ」というと、ぼくはジョー・ウォルッシュ(2011年3月5日)のシンセサイザーを用いたカヴァー(1975年ABC盤『ソー・ホワット』収録)を思い出す。1970年代のウォルシュ(当然、イーグルスに入る前)、死ぬほど好きでした。▶︎グレッグ・オズビーの名前を出して、ふと甘酸っぱい気持ちになる。独JMT(現ウィンター&ウィンター)からデビューした後、1990年から15年はブルーノートに所属し、毎年アルバムを出していたアルト・サックス奏者。彼は同社からかなり重用され、ジェイソン・モラン(2007年1月16日、2007年1月17日、2008年4月6日、2013年1月6日、2015年1月20日、2015年1月21日、2017年4月11日)ほか若手発掘にも貢献した人物。ストレート・アヘッド作に交えヒップホップ流れにあるアルバム(ダサくて、ぼくは好きじゃなかった)を出したりもしたし、彼はプーさん(1999年11月3日(2002年9月22日、2003年6月10日、2004年11月3日、2012年6月24日、2012年6月25日、2012年10月26日)とも音楽的な付き合いを持っていた。▶︎そんなオズビーには、1990年代前半までに複数回インタヴューしたことがあり、一つはNYに取材に発つ当日。デカい旅行バックを横に置きつつ午前中にしたので、よく覚えている。▶︎その後の、鈴木茂公演の際に、彼がMCで物販に触れたら、場内から笑いが出る。過去にこんなことを書いている(http://43142.diarynote.jp/201511200934467321/、参照)が、そのアイテムの多さはファンの間でも話題になっているのか。ちなみに満場の客は、男性比率が高かった。なかには、猫の顔をあしらった小さなポーチとかも売っているんだよなあ。
▶過去の、ジョー・ウォルシュ
http://43142.diarynote.jp/201103091707591166/
▶過去の、ジェイソン・モラン
http://43142.diarynote.jp/200701201417260000/
http://43142.diarynote.jp/200701201418210000/
http://43142.diarynote.jp/200804081928430000/
http://43142.diarynote.jp/201301151731112021/
http://43142.diarynote.jp/201501210901575140/
http://43142.diarynote.jp/201501220923108418/
http://43142.diarynote.jp/201704131639031673/
▶過去の、菊地雅章
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/movember1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-6.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20041103
http://43142.diarynote.jp/201207031322126509/
http://43142.diarynote.jp/201207031323242844/
http://43142.diarynote.jp/201210271744294415/
http://43142.diarynote.jp/201507091044561526/ インタヴュー
http://43142.diarynote.jp/?day=20160611 遺作について
事前にちらりと彼らの音を聞き、けっこう米国的な、丁々発止するジャズをやるという印象を得た。この<ライヴ三昧>に出てくる多くの欧州のジャズの担い手はユーロ的感性を介するオルタンティヴ視点を加えたジャズを披露しているが、それらと比すとヴェインはストレート。そんな彼らは、デイヴ・リーブマンやグレッグ・オズビーといったUSジャズの実力者たちを迎えたアルバムをリリースしているというのも、その要点を示唆するものだろう。……と、思っていたのだが、実演に触れ、やはり欧州性は出していると感じた。程度の差こそあれ。
仕掛けを伴うオリジナルあり、スタンダードの「サマータイム」あり(これは、彼らの飛躍手腕をを示したくて取り上げていると思えた)、クラシック作曲家モーリス・ラヴェルの「亡き女王のためのパヴァーヌ」もあり。このクラシック曲は、最初ドラマーのサム・ピアノのソロから始められた。ま、なんにせよ、確かな技量やジャズ感覚あってこそのピアノ・トリオ表現を聞かせるのは間違いないわけだが。次の予定があるため、ファースト・ショウだけを見て退出。通して見たら、また別の所感を覚えたかもしれない。
次は、六本木・ビルボードライブ東京(セカンド・ショウ)。会場に降りて、おやまあ。ステージ上に所狭しといっぱい機材が置いてある。ギターは7本立てかけてあったか。そんなに使われることはなかったが。出し物は、鈴木茂(2013年8月11日、2010年11月21日、2015年10月25日、2015年11月19日)の1975年作『バンド・ワゴン』をまんまやっちゃいます、というもの。
「風をあつめて」や「チュー・チュー・ガタゴト」はラジオから流れたのを聞いて小僧の頃から好きだったが、フォークぽいぬるさを覚えたためか はっぴいえんどにハマったことはなく、鈴木茂の『バンド・ワゴン』も存在は知っていたものの、手を伸ばしたことはなかった。それが、1990年前後だと思うが、ひょんなことから同作を聞いたら(多分、クラウンが再発し、CDが送付されてきたのだと思う)、これぞリトル・フィート(2000年12月8日、2012年5月22日)の最良の日本人のアダプテイション表現と感激しちゃったんだよなあ。
歌とギターの鈴木を、スタジオ界の重鎮がサポートする。キーボードの佐藤準 (2008年4月20日)と柴田俊文 、ベースの田中章弘、ドラムの長谷部徹 。個々のプレイヤーで一番いいなと思ったのは、田中。全盛期の、ケニー・グラッドニー(2016年5月24日)みたいじゃんと思った。そこに、パーカッション奏者がいた方が良かったかもしれない。
改めて、スライドで弾く曲が多かったんだんだなあと頷く。そうか、鈴木はちゃんと小指にスライド・バーをはめて演奏するんだな。それ、コントロールが格段に楽なので、奏法が狭くなりはするものの人差し指や薬指にはめる奏者もいる。こんなにスライド・ギターを弾くのは、彼も久しぶりだったのではないか。終盤は歌声がヘロったが、漂う感じがある歌声も魅力的だし、一部の曲を聞くとコードの広がりの妙をちゃんと知っていることもおおいに伝わる。
けっこう天然ぽい所作を見せる彼を見つつ、あまり老けていないと感じた。アルバムを最初に聞いたときの感激はなかったが、日本のロック史の襞を感じることもできたし、見ることができて良かったとは思えた実演でした。
▶過去の、鈴木茂
http://43142.diarynote.jp/?day=20101121
http://43142.diarynote.jp/?day=20130811
http://43142.diarynote.jp/201510290731105395/
http://43142.diarynote.jp/201511200934467321/
▶︎過去の、佐藤準
http://43142.diarynote.jp/?day=20080420
▶過去の、リトル・フィート
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-12.htm
http://43142.diarynote.jp/201205301327209613/
▶︎過去の、ケニー・グラッドニー
http://43142.diarynote.jp/201605250715068712/
<今日のライヴに対しての、覚書いくつか>
▶︎楽屋というハコには本当にひさしぶりに行ったら、地下にあったトイレが1階に移っていた。グランド・ピアノも置いてあり、ちゃんと食事もサーヴする大人の店ですね。▶︎そこに到るまでの、商店街を歩くのも楽しかった。東横線高架の下に商業施設が大々的に入ったりもし、中目黒は今一段と活気があるんだろうな。▶︎「亡き女王のためのパヴァーヌ」というと、ぼくはジョー・ウォルッシュ(2011年3月5日)のシンセサイザーを用いたカヴァー(1975年ABC盤『ソー・ホワット』収録)を思い出す。1970年代のウォルシュ(当然、イーグルスに入る前)、死ぬほど好きでした。▶︎グレッグ・オズビーの名前を出して、ふと甘酸っぱい気持ちになる。独JMT(現ウィンター&ウィンター)からデビューした後、1990年から15年はブルーノートに所属し、毎年アルバムを出していたアルト・サックス奏者。彼は同社からかなり重用され、ジェイソン・モラン(2007年1月16日、2007年1月17日、2008年4月6日、2013年1月6日、2015年1月20日、2015年1月21日、2017年4月11日)ほか若手発掘にも貢献した人物。ストレート・アヘッド作に交えヒップホップ流れにあるアルバム(ダサくて、ぼくは好きじゃなかった)を出したりもしたし、彼はプーさん(1999年11月3日(2002年9月22日、2003年6月10日、2004年11月3日、2012年6月24日、2012年6月25日、2012年10月26日)とも音楽的な付き合いを持っていた。▶︎そんなオズビーには、1990年代前半までに複数回インタヴューしたことがあり、一つはNYに取材に発つ当日。デカい旅行バックを横に置きつつ午前中にしたので、よく覚えている。▶︎その後の、鈴木茂公演の際に、彼がMCで物販に触れたら、場内から笑いが出る。過去にこんなことを書いている(http://43142.diarynote.jp/201511200934467321/、参照)が、そのアイテムの多さはファンの間でも話題になっているのか。ちなみに満場の客は、男性比率が高かった。なかには、猫の顔をあしらった小さなポーチとかも売っているんだよなあ。
▶過去の、ジョー・ウォルシュ
http://43142.diarynote.jp/201103091707591166/
▶過去の、ジェイソン・モラン
http://43142.diarynote.jp/200701201417260000/
http://43142.diarynote.jp/200701201418210000/
http://43142.diarynote.jp/200804081928430000/
http://43142.diarynote.jp/201301151731112021/
http://43142.diarynote.jp/201501210901575140/
http://43142.diarynote.jp/201501220923108418/
http://43142.diarynote.jp/201704131639031673/
▶過去の、菊地雅章
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/movember1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-6.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20041103
http://43142.diarynote.jp/201207031322126509/
http://43142.diarynote.jp/201207031323242844/
http://43142.diarynote.jp/201210271744294415/
http://43142.diarynote.jp/201507091044561526/ インタヴュー
http://43142.diarynote.jp/?day=20160611 遺作について
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