まず、渋谷・デュオ・ミュージック・イクスチェンジで、北の手触りを持つ二組を見る。

 最初に、北イングランド生まれのトラッド/フォーク系女性シンガーのビル(ベリンダ)・ジョーンズが出て来て、短い時間パフォーマンス。アコーディオンを弾き語り。素朴に、心をこめて。

 その後は、北アイルランドとイングランドの出身者からなる、トラッド系インストゥルメンタル4人組のフルック(2001年12月11日)。ホイッスル、フルート(少し、アコーディオン)、ギター、バウロンという変則編成だが、それゆえの妙味を介して、個性豊かなケルト経由表現をときにスピード感たっぷり、ときに詩情豊かに開いていて感心する。面々がそれぞれに腕がたつのは、すぐに了解。その4人が自在に絡むと、とても現代感覚を持つというか、時空を柔らかにカっとぶ感覚が表れて、こりゃ存在意義があるナと頷いた。

 アンコールでビル・ジョーンズとフルックが一緒に1曲やり、その後、フルックはまた2曲やったか。全部で2時間半ぐらいやったかな。

▶︎過去の、フルック
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-12.htm

 その後は、新宿・ピットインに行き、ECMから3作リーダー作を出しているスイス人シンガーのスザンヌ・アビュールを見る。初来日。オランダの音大(ハーグ王立音楽院)時代からの付き合いというピアニスト(オランダ人なのかな?)、まだ20代だろうフランス人クラリネット奏者、スウェーデン人ドラマーという、ワーキング・バンドによるパフォーマンスを披露。また、エンジニアも同行したよう。

 アビュールの歌唱は言葉を大切にしているためか過剰に尖らず、楚楚とした佇まいを持ちつつ、オルタナティヴなアコースティック・サウンドと同化する。アビュールはこのドラマーと最初にやってこの人しかいないと思ったらしいが、なるほどうねりはあるのに絹のような柔和な叩き方にはため息。また、クラリネット奏者も旧来のジャズ文脈から離れ、清新にしてもう一つの情緒とスペースを招く演奏を開いていて降参。いやはや、何気にすごい人たち揃えていると思った。そこには、知的で、創意のある密やかな冒険がいろいろあった。

<先だっての、アビュール>
 スイス大使館で、スザンヌ・アビュールと3人のメンバーたちと会ったのだが、皆好ましいユーロ感覚のようなものを持つ人たち。影響を受けたシンガーはと彼女に尋ねると、「楽器奏者のほうに受けてきた」とのお返事。マイルス・デイヴィスはその最たる奏者と言うので、彼のどの時期がお好みと問うと、『ビッチェズ・ブリュー』より前との答え。これ、エレクトリック期に入る前のマイルスということか。「ジャズ・シンガー然と歌う人ではなく、楽器のように歌を用いる人が、(ECM社主の)マンフレット・アイヒャーの好みなのではないか。だから、私は彼に認められたのだと思う」というような発言も、彼女はしていた。とても、自然体のいい大人、といういう印象を望外に得るとともに、同性からの支持もとても集めそう、そんな感想も得た。確か、彼女は子育ても両立しているんだっけ?

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