先人の金言をインタヴュー中に、発言主旨の分りやすいたとえとして出す。そういうことをするミュージシャンは少なくないわけだが、ぼくの経験上一番引用される言葉は、デューク・エリントンの「音楽には二種類しかない。いい音楽と、悪い音楽だ」というもの。それは往々にして、音楽にジャンル分けは必要ない、音楽は一つといった気持ちを表明するときに、引っ張り出されますね。まあ、先見性や洗練や優美さ、メロディ性や間口の広さやダイナミクスなどをエリントンの音楽が余裕で持ち、音楽のマジックたるものをきっちり宿しているからこそ、皆さん引用したくなるのだと思うが…。

 なんて思わせぶりに書いたが、そんな米国ジャズ史きっての偉人の財産を引き継ぐビッグ・バンド(2005年4月13日、2009年11月18日、2010年11月24日、2012年10月17日)を見る。丸の内・コットンクラブ、セカンド・ショウ。

 会場内に入り、何気に気分がアガる。例によりステージ上にちゃんと風情ある譜面台がずらりと並んでおり、“うれしいハレの場”の雰囲気をだしていて。当然、構成員は皆正装。管楽器12人に、ベースとドラム。そして、例によって、やんちゃファンキーじいさんのトミー・ジェイムス(ピアノ)がリーダーを務める。彼一曲ごとにボケの入ったMCも和やかにするが、それがちゃんと面白い人間性の発露となるとともに芸にもなっていて、ぜんぜんイヤな感じがしないよなー。

 「A列車で行こう」で始まったショウは、音楽的なところから見せ方の部分まで、米国黒人芸能の正の側面を問答無用に浮かび上がらせる。曲は基本短めだが、有機的なアンサンブルとソロが効果的に噛み合う様には大きく頷いちゃう。とともに、今のビッグ・バンド表現は往々にしてアンサブルのパートとソロのパートが乖離しがちと思わずにはいられず。うぬ、ここには本当に娯楽性にもたけ、変わらなくていいものが山ほどあると思えた。なんか初めて見るわけでもないのに、いいナと思えるポイントがいろいろあって、なんかとっても楽しかったYO。←こんな末尾の表記は、なんかトミー・ジェイムスの語り口に影響された? 

▶過去の、エリントン・オーケストラ
http://43142.diarynote.jp/200504151006160000/
http://43142.diarynote.jp/200911212112151307/
http://43142.diarynote.jp/201011250609539822/
http://43142.diarynote.jp/201210201219525855/

<今日の、自賛>
 10月はよくライヴに行ったナ、と改めて思う。こんなに行ったのはもしかして、このブログを書くようになって、一等賞? なんだかんだ仕事がつまっていたときもあって、一時はだいぶこのブログ原稿アップも遅延していたが。……この一ヶ月で書いた、ちゃちゃちゃのブログ原稿の量は35000字を余裕で超える。ほう、オレなんかすごいぢゃん。対価が支払われる普通の原稿以外に、これだけ書けば立派なものではないか。

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