全米No.1ヒット「キス&セイ・グッバイ」他の著名ヒットを持つ、ニュー
ジャージーの大御所ヴォーカル・グループ。場所は、丸の内・コットンクラブ
(セカンド)。オリジナル・メンバーはベース・ヴォーカルのウィンフレッ
ド・ラヴェットだけだが、グループ中興の祖というべき存在であり、ソロと
してのキャリアも輝かしいジェラルド・アルストンがグループに戻っている
のだから、なんの文句もない。バック・バンドはキーボード2、ギター、ベ
ース、ドラムという布陣。若い顔したギタリストをラヴェットは甥と紹介し
てた。また、彼はキーボードの一人をミュージカル・ディレクター、ドラマ
をバンド・リーダーと紹介していました。

 リードはすべてアルストンが取る。そして、それを他の3人がコーラスで
ふんわり持ち上げる。もちろん、ソウル・コーラス・グループ特有の振り付
けもあり。ただし、杖をついてステージに出てきた一人だけ年長に見えるラ
ヴェットは座っていて、踊りには交じらず。でも、彼は渋い低音で語りやMC
をし気分を盛り上げ、存在感を出し、それはそれで風情があると思わせる。

 曲はけっこう切れ目なしに。終盤、ゴスペルっぽいイントロに導かれて、
アルストンだけがステージに立って歌ったのは、サム・クックの「ア・チェ
ンジ・イズ・ゴナ・カム」。おお。もともとクック・フォロワー濃厚な乗り
を出していた彼ではあるのだが。鬼のような名曲であり、それを彼は見事に
歌いきる。このときが、一番客席側の歓声も高かったかも。いいもの、聞か
せていただきました。

 フロントの4人は、それぞれ赤、青、紫、水色と色違いの特殊仕様のスー
ツ(シャツやエナメルの靴も同色でまとめる)を身にまとい、バックは白基
調の衣服でまめとめている。そういう様式って、本当にいいな。その色違い
のスーツはこの日(3日目となる)が初めて披露するとかで、彼らはいくつ
も服を持ってきているよう。昨年末のザ・ウィスパーズ(2005年12月21
日)のほうが充実度は高かったが、この日もウキっとなれるソウル・ショウ
。続けざまに美味しいソウルのもろもろに触れ、ぼくは“ソウル・コーラス
・グループ振り付け同好会”を作りたくなっちゃった。

 この会場、ソウル〜大人ポップ系が多いのかと思ったら、この後のしばら
くはジャズ系が続く。1月23日と24日は粋と冒険を重ねられる名ジャズ歌手
マーク・マーフィ(クラブ・ミュージック側からの再評価の機運もあります
ね)と歌モノのバッキングが得意なピアニストのジョシュア・ウルフによる
デュオがあり、26日〜30日はブルーノートやテラーク等からリーダー作を安
定して出している敏腕ピアニストのベニー・グリーンのトリオ、そして31日
から2月5日まではずっとワーナー系に所属しているサイラス・チェスナッ
トのピアノ・トリオと続く。グリーンは白人、チェスナットは黒人という違
いはあれど二人とも1963年生まれで、似た時期に豊穣テクニシャンとして脚
光を浴びたということでは重なりますね。それと二人ともベティ・カーター
(カサンドラ・ウィルソンが土下座しちゃう偉人ジャズ・シンガーね)に雇
われた経験があるというのも。チェスナットのトリオは前に来日したとき
と同じ気心の知れたリズム隊を率いてのもの。一方、グリーンのほうは、ベ
ースはシカゴ音響派系トランペッターのロブ・マズレク(2004年1月20
日他)のバンドにかつていたこともあるジョン・ウェバーで、ドラムスはア
トンクティック他からリーダー作を出し、サイドマンとしても引く手あまた
のカール・アレンだ。チェスナットも、アレンをずっと雇っていたことがあ
った。そして、その後はザ・デューク・オブ・デキシーランドというディキ
シーのグループも出るという。


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